ファンタジーなクラシック30

 北の大地はいま一番すごしやすい季節になっております。

 ファンクラ30は、何かと話題のカメに関するものをいきましょう。

 ファンクラ10でご紹介した交響詩「死の舞踏」の作者カミーユ・サン=サーン(フランス式発音によるとサーンスのスが無いみたいです)による組曲「動物の謝肉祭」より第4曲「カメ」です。

 これは元々プライベート用に作曲された室内楽による冗談音楽です。いろいろ動物が登場しますので、せっかくですから順番に紹介します。

 1.序奏とライオン王の行進
  2台のピアノと弦楽による堂々たる導入部です。おお、グリフィンドール!!

 2.メンドリとオンドリ
  クラリネットとピアノなどによる軽妙な音楽。

 3.野生のラバ(敏捷な動物)
  2台のピアノによる激しい音楽。

 4.カメ
  第1ピアノと弦楽によるパロディ音楽です。オッフェンバックの有名な天国と地獄にある「カンカン」を超スローで演奏します。カメのカンカン。

 5.像
  第2ピアノとコントラバスが、これもベルリオーズの「妖精の踊り」を借りてきて、像がドシドシと踊ります。

 6.カンガルー 
  ここでいきなりカンガルーというのが洒落ています。ピアノ・デュオでぴょんぴょん飛び跳ねます。

 7.水族館
  フルートとグロッケン(チェレスタ)などが、ゆらゆらと水の流れるさま、そこに泳ぐ魚を描写します。

 8.耳の長い登場人物
  第3曲に対して家畜のロバだといわれています。バイオリンだけ。

 9.森の奥のカッコウ
  カッコーといえばクラリネット。ただしステージの裏です。森の奥深くにいるのを描写します。

 10.大きな鳥カゴ
  フルート、両ピアノ、弦楽。弦が鳥の羽ばたきを。フルートがさえずりを表します。

 11.ピアニスト
  ツェルニーの教本を青くなって必死に練習するピアニストは、サン=サーンによると「動物」の一種とのことです。ここではわざと初心者のように演奏しなくてはなりません。

 12.化石
  自作の「死の舞踏」の旋律やフランスの民謡などによる、化石の音楽。

 13.白鳥
  単独でバレエにもなっている超超超有名曲。原典はこれでした。チェロと両ピアノによります。ああ、うっとり……。

 14.終曲
  これまで登場した動物たちが勢ぞろいです。


        ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 カミーユ・サン=サーン(1835−1921)
曲名  組曲「動物の謝肉祭」
マイナー度★★
難易度★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★★
 
 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック29

 アメリカの作曲家に、バーバーという人がいます。最初この名前を見たとき、「床屋」なんてずいぶんストレートな名前だなあ、とびっくりしました。
 
 それはさておき、ファンクラ29はそのバーバーの「メディアの復習の踊り」です。

 バーバーの作品でおそらくもっとも高名なのは、「弦楽のためのアダージョ」でしょう。これは映画プラトーンの印象的なシーンのBGMに使われており、元は弦楽6重奏だったそうですが、弦楽合奏版に作曲者が編曲して、人気をえました。ケネディ大統領暗殺のラジオニュース第一報の後にも、これが流されたそうです。
 
 さて、バレエ音楽「メディア」より重要な部分を抜粋して「メディア組曲」が作られましたが、これはさらに短縮された1編の短い交響詩になっています。
 
 メディアとは太陽神の末裔の女魔術師で、コルキスの王女です。英雄イアソンと駆け落ちしてコリントへゆき、そこで子どもをうんで平和に暮らしていましたが、イアソンが野心に満ち、コリントの王女と結婚してメディアを捨ててしまいます。嫉妬と復讐に燃えたメディアは、結婚の贈り物として毒をしこんだドレスを王女へ送り、コリントの王女を殺害してしまいます。そして自分の子どもも殺して、竜に引かせたチャリオッツ(戦闘用2輪車)でコリントを去る……というストーリーです。
 
 音楽は最初、静かに始まりますが、緊張感のある木琴の音色が特徴的です。

 次第にドロドロしてゆくテーマは、愛する者に裏切られたメディアの苦悩と、嫉妬と恐ろしい復讐心を表しています。

 そして、やがて音楽は女魔術師の狂乱の躍りで一気に幕を閉じます。
 
 人間の心の奥底にひそむ負の部分をさらけ出した、芸術的な音楽です。が、そんな難しいものではなく、普通の映画音楽みたいでもあります。
  

         ☆∽§∽☆


 DATA

作曲者 サミュエル・バーバー(1910−1981)
曲名  メディアの復讐の踊り
マイナー度★★★★
難易度★★
ファンタジー度★★★★
聴かなきゃ損度★★★
 
 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック28 

 ようやく、この北の大地の私の住む場所にもチラホラと桜が咲いて、春らしくなってきました。

 ファンクラ28は、春のクラシックです。
 
 春のクラシックはけっこうあります。昔からよく題材に使われています。

 有名なものではヴィバルディの協奏曲集「四季」より春。1楽章の第1主題は誰もがきいたことのある名旋律です。この協奏曲は、昔の合奏協奏曲という形態のことです。

 マイナーなものではロシアの作曲家グラズノフのバレエ音楽「四季」より春。5分ほどの小曲で、明るい春の雰囲気です。

 え、ストラヴィンスキーのバレエ「春の祭典」!?

 こちらは春は春でも、大地の覚醒をいざなう生贄の踊りです(笑
 
 そんな中、本日はシューマン作曲の交響曲第1番「春」を。

 最期は精神病で発狂して死んでしまうシューマンが、10年の恋を実らせ、周囲の反対を押し切りつつ愛妻クララと結婚したばかりの時期の、ひとときの幸せを唄ったロマン派を代表するすばらしい交響曲です。
 
 荘厳なファンファーレより始まる1楽章は、すぐウキウキしたメロディーにとって変わられ、そのまま花咲き乱れる春の野を往くようです。

 2楽章は作曲者が「春の黄昏」とよんだ、ラルゲットのとてもゆったりしたヒーリング音楽です。

 3楽章は一転して幻想曲ふうのスケルツォ。春の夢の舞踏といったところでしょうか。春眠暁を覚えず、とはよくいったものです。

 そして4楽章、再び活気に満ちた春の様子がもどってきます。
 
 それでは。
 
 
               ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 ロベルト・シューマン(1810−1856)
曲名  交響曲第1番 「春」
マイナー度★★
難易度★★★
ファンタジー度★★★
聴かなきゃ損度★★★


ファンタジーなクラシック27

 みなさまいかがお過ごしでしょうか?

 この北の大地でもようやく最も南の函館で桜の開花が4月20日前後にせまってきました。(その前にいま中国からの黄砂とやらがけっこう迷惑)
 
 桜が咲きましたら「春のクラシック」をお届けしますが、本日のファンクラ27は、なにかと話題のバンパイアに関するクラシックです。
 
 「え、そんなものあるの!?」
 
 探せばあるのが、クラシックの奥の深いところ。 
 (といっても、現代音楽ですが)
 
 1954年生まれのイギリスの作曲家フィーニーの音楽による、イギリス・ノーザン・バレエシアターの1996年のヒット作だそうで、その名もバレエ音楽「ドラキュラ」です。
 
 ストーリーは……えー……英語がよめないのでわかりません(笑)
 
 音楽は
 
 プロローグ 
 第1幕
  チャリング・クロス駅
  トランシルヴァニア
  ドラキュラ城
 第2幕 
  ウィットビーのグランドホテルの冬庭
  サナトリウム
 第3幕
  ミナの部屋
  教会の地下聖堂
  死

 となっております。

 あとはこのタイトルと音楽より舞台を想像するしかありません。

 (その想像するというのも、音楽を聴く楽しみのひとつなんですけどね)
 
 音楽は切れ目なく続きます。

 プロローグは地を這うような重低音の心臓の鼓動より始まります。それへ不規則な打楽器(タムタム。ドラムセットについてるヤツ)が加わり、さらに不気味な女性コーラス。弦の重なり。チャイムの音。

 あー、ブルブル。

 第1幕

 チャリングX駅。ヘルシング教授とジョナサン・ホーカーがどうたらこうたらとブックレートに書いてあります。(スミマセン……)

 トランシルヴァニア。に、向かう場面と思われます。高音のバイオリンの刻みによる民俗音楽のような旋律が緊張感をいや増します。ルーマニアに入った一行が、村とかを訪ねあるき、やがて城が見えるようです。

 ドラキュラ城の音楽は3つの部分に別れています。

 1.到着 神聖で不気味な雰囲気です。

 2.スリー・ヴァンパイアズ なんで3人なんでしょうね? わあ、ビックリオドロイタ、って感じの曲です。戦闘シーンと思われます。

 3.ドラキュラとホーカー じっくりじっくりと盛り上がって悲鳴。騒乱。何が起こったんでしょ?
 
 第2幕

 グランドホテルの冬庭はバレエ中もっとも長い部分で、音楽も20分あります。一転して明るいワルツより始まるのが意表をついています。(ルーシーのダンス、とあります)

 楽しげな雰囲気がずっと続きますが、やがて霧の中より響くような女性合唱により、嵐とドラキュラ伯爵の登場が予感されます。

 最後の方ではチェロのもの悲しいソロが印象的です。

 サナトリウムでは、ヘルシング教授のクリニックでルーシーがなにやらハナシをする場面のようです。

 (どうでもいいが突然の悲鳴はやめてほしい;笑)
 
 第3幕

 ミナの部屋。ミナもルーシーも誰なのか分からないのが口惜しいですが(笑)重要な登場人物(ヒロイン?)のようです。CDのジャケットに写ってる女の人のことかな? 

 最初は、古い教会の音楽のような雰囲気です。ハープシコード(ピアノの前の古い楽器。チェンバロとも)の音が古さをかもしだします。

 突如、クライマックスが訪れます。プロローグの雰囲気……音楽は盛り上がり、悲鳴の連続。

 そして、教会の地下聖堂。急に静かになり、女性コーラスに心臓の音。

 緊迫した合唱が始まります。

 伯爵との最後の対決。

 重厚なリズムと旋律。

 全曲全シーンの白眉です。

 死。ドラキュラ伯爵は日の光を浴び……すべてのパワーが失われます。

 最後はおきまり、心臓に杭が打ち込まれ……

 The survivors are left to count the cost.

 という解説の最後の一文がイミシンです。

 長くなりました。今宵はこのへんで……。
 
 
               ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 フィリップ・フィーニー(1954−    )
曲名  バレエ音楽「ドラキュラ」
マイナー度★★★★★
難易度★★★(音楽自体は映画音楽そのものですが80分とちょっと長い)
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★★
 
 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック26 

 本日のファンクラ26(ファンクラブではありません)は童話に関するクラシックです。
 
 童話に関するものでは、以前、ホフマンの原作によるチャイコフスキーのバレエ・くるみ割人形をご紹介しましたが、本日はフンパーディンクのオペラ「ヘンゼルとグレーテル」より「序曲」と「夢のパントマイム」です。

 ヘンゼルとクレーテルはご存じ森で迷った兄妹が闇の魔女をやっつけて、魔法でお菓子にされていた多くの子どもらを助けるというグリム童話です。それをそのままオペラにしたのがフンパーディンクという作曲家です。

 本当は怖いなんとやらを見るまでもなく、けっこうビックリする方法で魔女をやっつけるんですよね。

 魔女もそんなんでやられんなよ、って感じですが……まあ、それはおいといて、音楽を。オペラは苦手であまり聴かないので、本日も有名な部分だけを。
 
 序曲の方は、静かなホルンの演奏から始まります。森の様子です。オペラの序曲は劇中にでる主要な音楽をいろいろ工夫して紹介するというきまり(のようなもの)があります。魔法をとく場面、朝の場面、等々の主題(動機)によって音楽が構成されています。
 
 夢のパントマイムは、私のもっているCDの解説を参考にしますと、

 「第2幕の最後、森の中でイチゴ摘みに夢中になっているうちに夜になり、道に迷って疲れたヘンゼルとクレーテルが夕べの祈りを歌って眠ったのち、14人の天使たちが現れ、二人の安らかな眠りを護るように踊る場面」

 の音楽だそうです。
 
 探せばオペラの全曲のCDもあると思いますが、この2曲だけでもたいへんすばらしくファンタジックでメルヘンたっぷりの気分になることができます。
 
 ちなみにフンパーディンクさんはこのオペラがもっとも有名で、あとはなんかそうでもない、マイナーな作曲家です。
  

               ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 エンゲルベルト・フンパーディンク(1854−1921)
曲名  歌劇「ヘンゼルとグレーテル」より
      序曲
      夢のパントマイム
マイナー度★★★★
難易度★★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★
 
 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック25

 記念すべき25回目は、クモに関するクラシックです。

 「タランテラ」という曲があるのはご存じでしょうか?

 スペインあたりで、カスタネットやタンバリンを伴奏に踊られる3/4拍子か6/8拍子のテンポの速い民俗舞踊です。

 19世紀ごろ、クラシックに取り入れられたそうです。

 クラシックで「タランテラ」というと、別にスペイン風にはこだわらず、速い6/8拍子の踊りのような音楽のことで、ピアノ曲やヴァイオリン曲にあり、リストやショパンの「タランテラ」が有名です。
 
 この「タランテラ」諸説ありまして、毒グモのタランチュラに咬まれたとき、激しい踊りを踊って汗といっしょに毒を出そうとし、その踊りをタランテラというようになった。

 またタランチュラに咬まれると死ぬまで狂ったように踊るという迷信があり、その踊りを再現したのがタランテラ。

 その地方では血族結婚が行われ、先天性の精神障害をもった人が多く、その人たちを激しく踊らせた。それは一種の音楽療法で、踊ると発作が納まった。それを上記の迷信と合わせ、タランテラと呼ばれた。
 
 なんにせよタランチュラにはいい迷惑というわけです。

 そもそもスペインにタランチュラっているのか……???

 そして今回は、ドビュッシー作曲・ラヴェル編曲の「スティーリア風タランテラ」をお届けしましょう。

 この「タランテラ」も元はピアノ曲でしたが、作曲家としての後輩のラヴェルがのちにオーケストラに編曲しました。
 
 ドビュッシーといえばオケ曲では「海」や「牧神の午後への前奏曲」、バレエ音楽「遊戯」、ピアノ曲ではかの「ベルガマスク組曲」が高名です。

 一方ラヴェルはバレエ「ボレロ」や「ダフニスとクロエ」、「死せる王女のためのパヴァーヌ」、私の好きな曲では「ラ・ヴァルス」などが高名です。

 編曲ものではムスルグスキーの「展覧会の絵」をオーケストラに編曲し、名声をえています。
 
 この二人の合作ですから、さぞスゴイ曲かと思いきや、元はピアノの小品なので6分ほどのアンコール曲のような佳品になっています。
 
 ドビュッシーの音楽は茫洋とした半調のまさに曇り空のパリを彷彿とさせますが、そこはタランテラ、テンポの速い、優雅でかつ微妙にアクセントのずらされた複雑な作品です。
 

               ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 クロード・ドビュッシー(1862−1918)
編曲   モーリス・ラヴェル(1875−1937)
曲名  スティーリア風タランテラ
マイナー度★★★★
難易度★★
ファンタジー度★★★
聴かなきゃ損度★★★
 
 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック24
     
 本日は月に関するクラシックを2曲お届けします。

 なぜ2曲なのか。

 月というのは、ロマンティックな面とそしてもうひとつ、狂気のメタファーでもあるからです。
 
 まずロマンティックな月。

 これはもうベートーヴェン作曲のピアノソナタ第17番「月光」以外にないでしょう。特に1楽章の華麗にして優美な音楽は、月光の名にふさわしいものがあります。1楽章だけなら5分半ですし、これだけ聴いても問題ありません。

 問題なのは、狂気のメタファーとしての月です。

 ここにトンデモナイ曲があります。

 シェーンベルク作曲の「月に憑かれたピエロ」です。

 名前がもうトンデモナイでしょ?

 どんな曲ですかって?

 ソプラノと5人の器楽奏者のために書かれた室内楽です。ソプラノは歌とセリフの中間の「シュプレッヒシュティンメ」という舌をかみそうなヤツをやります。内容はピエロが月光の中、殺人、死刑、流れる血……という幻想にとらわれ、だんだん狂ってく……というイカレタものです。

 しかもこの音楽は無調様式という形式で書かれています。

 無調。すなわちハ調もイ調もなんにもないんです。

 ようするにどうなるか。メロディー(旋律)が無いんです!

 「メロディーが無いのにどうやって歌うの?」

 歌わないんです。

 「……じゃあ、しゃべるの?」

 しゃべらないんです。シュプレッヒしてるんです! 

 ああ、書いてるワタシが分けわからない。

 これを聴くと、あなたも狂気にとらわれる!?
 
 (もっとイカレタ、オルフ作曲の歌劇「月」というのもありますが……聴いた事が無いので割愛します。)


             ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1760−1812)
曲名  ピアノソナタ第17番 「月光」
マイナー度★ 
難易度★★
ファンタジー度★★★
聴かなきゃ損度★★★


作曲者 アルノルト・シェーンベルク(1874−1951)
曲名  月に憑かれたピエロ
マイナー度★★★★
難易度★★★★★
ファンタジー度★★★
聴かなきゃ損度★★★★
 
 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック23

 NIREHTYLS   テンシュです。

 ファンタジーなクラシック、今回は指輪物語公開記念といたしまして、指輪つながり、ワーグナーの超々大作「ニーベルングの指輪」をご紹介します。
 (今回はちょっと長文です)

 これはいわゆるオペラですが、規模が他の作品とは段違いにちがいます。その点も指輪物語に匹敵するでしょう。

 北欧神話を舞台にしてあり、全部で4部作でして、1作が大体上演に3時間かかりまして、それを4日間連続して上演します。前夜祭・第1夜・第2夜・第3夜、といったカンジです。
 
 作曲だけでもすごいのですが、ワーグナーは作曲だけでなく台本、舞台演出、指揮、そして上演のための会場の設計から上演会の企画運営に到るまですべて一人で行ったというスーパーマンです。

 ストーリーはこちらも、運命の指輪をめぐり、神々が滅んで人間の世が幕を開ける、という壮大なもので、オペラそのものを鑑賞するのも良いですが、格別なオペラファンでないかぎり、ちょっと重労働でしょう。

 そういうときは、オペラの中の有名な楽曲をセレクトした「ニーベルングの指輪〜ハイライトオーケストラ曲集」というのがたくさんでていますので、それを聴くと良いです。
 
 かくいう私も、その管弦楽集を好んで聴くタイプです。

 たいてい、CDになる曲は決まっていまして、私のもっているのには次の曲が入っています。

 CDによっては、順番がちがう場合もありますが、私はオペラの順番通りに紹介します。

 前夜祭「ラインの黄金」より「ヴァルハラ城への神々の入城」

 ラインの黄金より運命の指輪は作られます。神々の司ヴォータンが巨人族ファゾルトとファフナーに建てさせた城ヴァルハラに、神々が虹を渡って入城してゆくときのBGMです。

 ハンマーが打ち鳴らされたり、雷鳴が轟いたりの豪快な音楽です。最後の方は壮大に神々が渡ってゆく様を描きます。

 第1夜「ヴァルキューレ」より「ヴァルキューレの騎行」

 以前にも単独で紹介した曲です。これは有名ですので、解説はいらないでしょう。ヴァルキューレはヴォータンが智の神エルダに生ませた9人の娘で、翼のある馬にまたがって天を駆ける乙女たちです。

 第1夜「ヴァルキューレ」より「魔の炎の音楽」

 岩山の頂上に娘ブリュンヒルデをねかせたヴォータンはブリュンヒルデを護るために周囲を炎でつつみます。火の神ローゲにより、岩山はゆっくりと炎につつまれます。名前とはうらはらに(?)後半のじっさいに炎があがるシーンはとても美しい、清らかな音楽です。

 第2夜「ジークフリート」より「森のささやき」

 物語全体の主人公・英雄ジークフリートが、感情に目めざめるシーンの音楽です。

 第3夜「神々の黄昏」より「夜明け」と「ジークフリートのラインへの旅」

 第3夜の序奏です。ブリュンヒルデと結婚したジークフリートが、旅立つシーンの音楽です。ちょっとドラクエっぽい??

 第3夜「神々の黄昏」より「ジークフリートの葬送行進曲」と「終曲」

 英雄ジークフリートの死によって神々の世界は崩れさります。ブリュンヒルデは夫の後を追って自ら生命を絶ち、超壮大な物語全体の幕を引きます。
 
 ニーベルングの指輪は松本零次が好み、ハーロックやクィーンエメラルダスの物語に応用しています。指輪物語も、ニーベルングの指輪に、何かヒントを得たのかもしれません。

 指輪は古来より不思議な力があると信じられ、結婚指輪も元は祝福(呪い)の道具です。左手の薬指は心臓に直結しているとされ、そこに互いに指輪ではめることで、契りとします。契りとは文字通り一種の「契約」で、破るとペナルティが課せられます。

 そういう見えない強制力が、魔法の指輪を生んだのでしょう。


             ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 リヒャルト・ワーグナー(1813−1886)
曲名  楽劇「ニーベルングの指輪」ハイライト
マイナー度★ 
難易度★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★★
 
 まこと音楽とは、何者にも勝る魔法です! 

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ファンタジーなクラシック 22

 NIREHTYLS   テンシュです。

 
 さて本日のファンクラ(略?)22は、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」です。これは作曲者がスコットランドを旅行したさいに訪れたヘブリディーズ諸島のスタッファ島にある奇勝(奇岩等による珍しい風景)を見たときの印象を元に作曲され、メロディーや構成の美しさはもとより、ときに激しく、ときにもの悲しく、メンデルスゾーンの作品の中でも特に有名なものになっています。

 そして、みなさん、お気づきでしょうか。

 ヘブリディーズ諸島といえば……そう、ヘブリディーズ・ブラック種ドラゴンの棲息地です。

 きっとメンデルスゾーンも魔法族、もしくは魔法族にごく親しいマグルとして、ヘブリディーズ諸島に代々住んでドラゴンの管理をしているマクファスティー家に、案内を頼んだのかもしれませんね。

 そう思うと、ドラゴンがいまにも出てきそうな雰囲気の音楽にも聞こえるから、不思議です。

 ちなみにモーツァルトの歌劇は「フィガロの結婚」で、ときどき間ちがえる人がいます。「フィンガルの結婚」とか「フィガロの洞窟」とか……。

          
           ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 フェリックス・メンデルスゾーン(1809−1847) 
曲名  序曲「フィンガルの洞窟」
マイナー度★★
難易度★★ 
ファンタジー度★★★
聴かなきゃ損度★★★ 
 
 まこと音楽とは、何者にも勝る魔法です! 

SERPIENTE !


ファンタジーなクラシック 21

 NIREHTYLS ! テンシュです!

 ファンタジーというか、今回は自分のペットにまつわるクラシックです。

 私のペットはコウモリのパウケ君ですが、コウモリのクラシック? なんだそれ、とお思いになった方、なんとあるんです。

 それはヨハン・シュトラウスIIの喜歌劇「こうもり」です。

 残念ながら私はオペラはぜんぜんみないので、こうもりのストーリーがどんなだ、とか、そもそもなんで「こうもり」なの?? とか、まったくわかりません。すみません。

 でも喜歌劇「こうもり」序曲は、とても楽しい音楽です。

 まず冒頭よりいきなりポンポンポン! とはじけるような音楽です。これはなんとパーティーでシャンパンを開ける音だと言われてます。

 続いて劇中に登場するワルツやポルカが次々と登場です。

 最後はたたみ込むように一気に終ります。
 
 本当はこのあとにようやく劇の幕が開くのですが、序曲だけでもよく演奏されます。いま話題の小澤征爾/ウィーンフィルの2002ニューイヤーコンサートにも入ってるはずです。(私は小澤もニューイヤーもあまり好きではないので、買ってません)

 みなさまのペットに関するクラシック(オケ曲)、あったら発表してゆきたいと思います。
 
 ところでコウモリがペットの人って他にいるのでしょうか???


           ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 ヨハン・シュトラウスII世(生没年資料不足にて不明)
曲名  喜歌劇「こうもり」序曲
マイナー度★ 
難易度★
ファンタジー度★★
聴かなきゃ損度★★★ 
 
 まこと音楽とは、何者にも勝る魔法です! 
 
SERPIENTE !







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