ニレーティルス テンシュです。


ファンタジーなクラシック70(最終回)


 2001年10月24日(水)に第1弾を投稿してより、本日、2004年5月23日(日)の第70回で、いよいよこのファンタジーなクラシックも最終回となりました。ここまで続いて来れたのは、ひとえに、読んでくださる方の存在でした。あらためて御礼申し上げます。
 
 ロシアの作曲家、セルゲイ・プロコフィエフは以前「ピーターと狼」でお届けしたことがあると思いますが、今回は、彼の初期の幻想的な管弦楽組曲をお届けします。スキタイ組曲「アラとロリー」です。バレー音楽として作曲されましたが、諸々の事情で、オーケストラのための組曲として独立しました。次の4つの音楽からなっています。

 1 ヴェレスとアラの崇拝 
 2 邪教の神、そして悪の精の踊り
 3 夜
 4 ロリーの輝かしい出発と日の出

 スキタイとは現在のウクライナあたりにあった騎馬民族のことで、そこでの伝説がバレーとして構想されましたが、先輩作曲家にあたるストラヴィンスキーのバレー「火の鳥」(第1回紹介)や「春の祭典」にストーリーも音楽も似ているという理由で、バレーとしてはボツになったといういわくがあります。

 激しい不協和音や、荒々しいリズムによって、蠱惑的な情景、そして原始的な太陽崇拝の様子が、活き活きとオーケストラで描写されています。

 録音もけっこう多いので、いちどお試しになることをおすすめいたします。その迫力と幻想さ、そして異国情緒に、きっとスキタイ人たちの馬を駆る姿が目にうかぶことでしょう。
 
 
 さて、このファンタジーなクラシックですが、miyabi さんとスキラさんの多大なるご尽力により、ひとまず、第1回から70回まで、わたしの個人HP「後の祭」でページを作って閲覧できるようにすることと相成りました。

 また、キャロリンさんよりの情報によれば、寮史版のほうも、新友の会HPで閲覧できるかもしれないとのことです。こちらは、まだ未確認ですが………。私としては、両方とも、お楽しみいただけたらと思っています。
 

       ☆  ∽§∽  ☆

 
 DATA

作曲者 セルゲイ・プロコフィエフ(1891−1953)
曲名  スキタイ組曲「アラとロリー」
マイナー度★★★★
難易度★★★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★★


 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!    
 
 ご愛読ありがとうございました。
 
 ファンタジーなクラシック 日本スリザリン寮談話室版・完。



セルピエンテ!

☆ ∽§∽ ☆ ∽§∽ ☆ ∽§∽ ☆ ∽§∽ ☆ ∽§∽ ☆
30075 TENNS&蝙蝠の ww PAUKE
スリザリン管弦楽団  ソロパウカー(署名の遊びです)


ファンタジーなクラシック69

 今回は、西洋音楽の王道中の王道であるドイツロマン派音楽より、ヴェーバーの作曲した「精霊の王者」序曲をお届けします。
 
 ドイツの重鎮、ヴェーバーはモーツァルトとワーグナーをつなぐオペラ作家として、そしてオペラというものが単なる娯楽的な歌物語だったのを、音楽+演劇という重厚なドイツ歌劇へと変貌させた創始者として、とても重要な作曲家とされています。有名なところでは、歌劇「魔弾の射手」があるでしょう。これもとてもファンタジックな、しかもドイツ流の暗く重い作品です。
 
 「精霊の王者」は、なんとヴェーバーが17歳のときに作曲した「リューベツァール」というオペラがあり、完成はしなかったのですが、20歳になって、序曲だけを演奏会用に改訂して、「精霊の王者」として発表したということです。

 鋭く激しい、騒々しい弦楽の第1主題と優雅で緊張感のある木管の第2主題が入り交じるソナタ形式ですが、ぜんぶで5分というほどの短さで、ずいぶんと正式そのものが短縮されています。

 第2主題の再現部が、マーチ調でコーダを兼ねているようです。

 短いながらも、堂々とした、まったく西洋ファンタジーの城へ行進する騎士たちを想わせる作風の音楽です。


       ☆ ∽§∽ ☆

 
 DATA

作曲者 カール・マリア・フォン・ヴェーバー(1786−1826)
曲名  「妖精の王者」序曲
マイナー度★★★★★
難易度★★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です! 


ファンタジーなクラシック68
 
 前回紹介のオットリーノ・レスピーギの秘曲をもう1曲お届けします。
 
 レスピーギの作曲した、全体で80分、大管弦楽に別動隊のブラスバンド、合唱、ソリスト、それにナレーションまで加わった壮大なバレー音楽「シバの女王ベルキス」から作られた管弦楽組曲「シバの女王ベルキス」です。
 
 聖書に基づくお話で、紀元前1000年に、へブライ国の王ソロモンは、遠く南国のシバ国の若い女王ベルキスがかの地よりソロモン王を愛しているということを鳥や風に告げられます。そこでソロモンはベルキスを召しだします。ベルキスは宝物を満載した馬車に乗り、戦士、奴隷、像にラクダを引き連れて砂漠を渡り、ヘブライへ赴くのです。

 組曲は以下の4種類からなっています。
 
 1.ソロモンの夢
 2.戦いの踊り
 3.ベルキスの暁の踊り
 4.狂宴の踊り

 なお、出版されている楽譜では、2と3の順番が逆ということですが、音楽的な効果や面白さを配慮し、このように録音されたり演奏されたりしているそうです。

 「ソロモンの夢」

 ヘブライの地で威厳あるソロモン王がしかし孤独に佇む場面の音楽で、レスピーギ得意の東洋的な旋律で、物憂げな雰囲気の音楽が奏でられます。最後には4楽章を先取りする、ベルキスとの出会いのテーマが奏されて、宴会を暗示します。

 「戦いの踊り」

 バレーより2つの場面がとられています。前半は「太鼓の踊り」で、物語の後半での、大小2種類の太鼓による狂乱的な踊りです。太鼓と小クラリネットの演奏が聴き物です。すぐに、音楽はソロモン王の黒人奴隷が長槍をもって踊る激しい戦闘の踊りになります。

 「ベルキスの暁の踊り」

 シバの地で暁にねむるベルキスが、日の出と共に踊る場面です。ゆっくりとしたアラビアンドラムのリズムで、なんとも官能的な踊りが繰り広げられます。

 「狂宴の踊り」

 ついにヘブライへ到着したベルキスを讃えた団宴会の様子です。弦楽の狂ったような導入部の後、全管弦楽が大騒ぎをします。中間部ではステージ裏のトランペットが、ベルキスの登場を暗示します。そのラストに、ついに2つの玉座が登場し、ソロモンとベルキスが並んで登場するのです。
 
 日本では、吹奏楽に編曲されているほうが有名だと思います。

 オリエンタリズムに溢れ、壮麗で、豪華で、とにかく楽しい音楽です。憂鬱な天気の日に聴くと、気分が晴れましょう。


   ☆ ∽§∽ ☆

 
 DATA

作曲者 オットリーノ・レスピーギ(1879−1936)
曲名  「シバの女王ベルキス」管弦楽のための組曲
マイナー度★★★ 
難易度★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック67

 イタリア出身で、ファンクラ50でご紹介したシェヘラザードの作曲者・リムスキー=コルサコフの弟子となったレスピーギは、ローマの景観や風俗を描いた交響詩「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭」で高名な作曲家です。彼の音楽はイタリア人らしい明るさや華やかさに加え、師匠譲りの華麗な管弦楽法が特徴です。ファンクラ2以来の登場です。

 本日は、彼の書いた音楽の中より、「教会のステンドグラス〜4つの交響的印象」を お届けします。

 これは次の4曲からなる管弦楽組曲であり、それぞれが非常に情景的であり、とてもファンタジーに溢れています。

 1.エジプトへの逃亡 
 2.大天使聖ミカエル
 3.聖クララの朝の祈り
 4.聖グレゴリ大法王

 第1曲「エジプトへの逃亡」は古いフリギア旋法によって奏でられる物憂げな旋律が印象的な、夜の砂漠を二頭立ての馬車で行く音楽です。

 第2曲「大天使聖ミカエル」は天使長ミカエルと堕天使ルシフェル両軍団の戦い、そしてサタンとなったルシフェルが地獄へ落とされる様子が描かれた非常に激しい音楽です。

 第3曲「聖クララの朝の祈り」では、フランシスコ女子修道会の創始者聖クララの真摯で敬虔な祈りの様子が描かれます。とても瞑想的な音楽です。

 第4曲「聖グレゴリ大法王」は、ローマカトリックの教会音楽を改革した法王を讃えた音楽で、オルガンも入った、グレゴリオ聖歌のコラールに基づく、法王の戴冠式を思わせるとても豪華で壮麗な音楽です。

 どれも聖書よりの情景が描かれたステンドグラスをイメージしていると云われています。


   ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 オットリーノ・レスピーギ(1879−1936)
曲名  「教会のステンドグラス」4つの交響的印象
マイナー度★★★★★ 
難易度★★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック65

 こんにちは。ファンクラその66です。

 70まで発表し、最終回とする予定です。

 ドイツ近代音楽とロマン派の最後の巨匠、リヒャルト・シュトラウスは第二次世界大戦を経て戦後まで活躍していました。彼は若いときは主に交響詩を作曲し、35歳ほどでその音楽を究めてしまうと、今度はオペラに転向しました。指揮活動も盛んで、ナチスドイツの音楽院総裁を勤めたので、問題となったこともあります。当時、ナチスと日本帝国は同盟を結んでいましたので、日本政府からの依頼で「日本建国2600年記念祝典曲」という音楽を書いたこともあります。

 彼の交響詩はどれもすばらしいものですが、その中にドイツの民話をモチーフにした「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」というものがあります。ティルはドイツでは知らない者がいないというほどの有名な伝説状の人物であるらしく、14世紀ごろの放浪者で、各地でいたずら騒ぎを起こしたそうです。
 
 音楽には大きく2つの主題(メイン旋律)があります。

 ひとつはティルそのものを表しており、ホルンが最高音から最低音までのすべての音域を使い切るというウルトラ技法で高らかと吹き鳴らします。

 ひとつはクラリネットが短くあざ笑うかのように吹くもので、作曲者が「極道の妖怪」と名づけたユーモアの主題です。

 音楽はティルの様々ないたずらや騒動を見事に描きます。しかしティルは最後には官吏に捕まって、断頭台で処刑されてしまいます。


 打ち鳴らされる太鼓と、重い雰囲気。

 ですが、最後は、クラリネットがユーモアの主題を吹いて、明るくジャンジャン! と終わるのです。

 抑圧や圧政に対抗するユーモアは、永遠に不滅という意味なのでしょうか。
 

  ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 リヒャルト・シュトラウス(1864−1949)
曲名  ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
マイナー度★★ 
難易度★★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック65

 談話室閉鎖まで、なるべく多く発表したいと思います。

(なお、水面下では閉鎖後に備えて色々と動いております。ご愛読者さま、ご安心を。)

 ファンクラでは何度か日本人の作曲家を紹介してきましたが、今回もそうです。吹奏楽やマンドリンを行っている方、いた方にはよくご存じの、大阪出身の作曲家、「浪花のバルトーク」こと大栗 裕の「神話」をご紹介します。
 
 神話は吹奏楽のために書かれた交響詩風の音楽で、記紀神話にあるアマテラスの天岩戸の物語を音化しています。1973年に吹奏楽版が作曲されましたが、1977年にオーケストラへ編曲されています。それぞれ、「吹奏楽のための神話」「管弦楽のための神話」と呼ばれています。
 
 曲は鋭く短いクラリネットとティンパニによる導入より、アンダンテで雲海ただよう神話世界の情景が書かれます。これはアマテラスが岩戸に隠れてしまって真っ暗な天界の様子です。導入の音は岩戸が閉まってしまった音なのです。
 
 そこで知恵の神オモイカネの発案により、神々の宴会が始まります。トランペットが常世長鳴鳥(トコヨノナガナキドリ=ニワトリのことです。)の鳴き声を表し、打楽器だけの短い導入より、10/8拍子という変拍子で激しくアメノウズメノミコトによるダンスが始まります。あまりに激しく踊ったため、ウズメ様の服が乱れて神々は大笑い。(昔の人は服がはだけるとコミカルに思った様ですね。)
 
 テンポが変わって4/4拍子の行進曲調になり、なおも踊りが続きます。すると、突然、雰囲気が変わり、今度はフルートとクラリネットが打楽器の緊張した打音をバックに不安げな音楽をやります。これは、何が起こったのかと外をいぶかっているアマテラス神の様子であるとのことです。
 
 そこでオモイカネは、もうひと騒ぎと、再び変拍子が始まります。

 そしてついに、ドラの一撃で、少しだけ岩戸が空き、それいまだと力と相撲の神タジカラヲノカミが一気に岩戸を開けて、アマテラスが出てきて再び世界は光におおわれ、大団円という音楽です。

 10数分の時間の中でこれだけの物語を表しているのは、なかなか凄い物だと思います。
 

  ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 大栗 裕 おおぐり ひろし(1918−1982)
曲名  神話−天の岩屋戸の物語による
マイナー度★★★ 
難易度★★
ファンタジー度★★★★
聴かなきゃ損度★★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック64

 本州はすっかり桜も散ってしまったでしょうか。北の大地はようやく南のすみっこで咲き始めたばかりですのでこれから春本番。お許しください。
                       
 ファンタジーなクラシック第64回です。談話室での発表はあと数回でおしまいになるでしょう。わたしがスリザリン寮に入寮し、談話室へ出入りする様になってから、約2年半。思えば、よく続きましたね(笑)
          
 昨年もいまどき、春のクラシックをお届けしております。本日も、そうです。イギリスの現代作曲家、ブリテンの「春の交響曲」です。
 
 春の交響曲は、合唱と管弦楽、そして独唱のために書かれた音楽です。16世紀から20世紀までの詩人による詩へ作曲された物で、イギリスの春………を想像できるかもしれません。日本では、お花見のイメージがあるためか、春というとウキウキして、つい騒ぎたくなりますが、この音楽は実におとなしく、うららかに、そして若干暗めに、落ち着いて春が歌われます。
 
 全体で4つの部分に別れており、途中では児童合唱も加わって、口笛なども吹き鳴らされ、陽気さを現しています。
 
 しかしぜったいに、お祭騒ぎにはなりません。
 
 そういう意味で、聴いていて飽きてくる人がいるかもしれません。
 
 春の静かな1日、ゆっくりと春の訪れを楽しみたい方にお薦めします。

 ペレノール野の春も、こんな感じなのでしょうか?
 

 ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 ベンジャミン・ブリテン(1913−1976)
曲名  春の交響曲
マイナー度★★★★
難易度★★★
ファンタジー度★★★★
聴かなきゃ損度★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック63

 連続投稿失礼します。あらためてスリザリン寮開寮3周年おめでとうございます。ファンクラ63は、純粋に祝典序曲をお届けいたします。
 
 単純に「祝典序曲」と名付けられた音楽は、いろいろな作曲家が書いていて、有名無名とりまぜて、けっこう数があります。それだけで、交響曲とか協奏曲のように、コレクションと鑑賞の価値があります。元来機会音楽ですので、作曲を依頼される事も多いかと思います。

 今回は、ハデに一発パーッと、ショスタコーヴィチの祝典序曲をお届けいたします。このショスタコ(ファンはこのように主にロシア系の長い名前を略する。例:チャイコフスキーはチャイコ。指揮者のロジェストヴェンスキーはロジェヴェン。ロジェストヴェンスキーの指揮したチャイコフスキーの交響曲第5番は「ロジェヴェンのチャイ5」となる。)の祝典序曲は、おそらくもっとも高名なものでしょう。吹奏楽にも編曲されてますので、もしかしたら演奏された方がいらっしゃるかもしれません。

 祝典の幕を開けるに相応しい輝くようなファンファーレで始まり、ノリノリのテンポで、クラリネットが颯爽とテーマを歌い上げ、それが全合奏で表現されると、またファンファーレが帰って来て、曲を締めます。全部で5分ほどの音楽です。


 ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 ドミトリ・ショスタコーヴィチ(1906−1975)
曲名  祝典序曲
マイナー度★★
難易度★
ファンタジー度★★★★
聴かなきゃ損度★★★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック62

 スリザリン寮開寮3周年だそうで、おめでとうございます。さっそく麦焼酎をいただいております。もちろんロックです。今日は副鼻腔炎のクスリをのむのはやめようかと思います。長風邪をほっといたら、正月にかかってしまいました。

 本日、ファンタジーなクラシック62は、kokiota さんが何度かお伝えしておりました、エディプス王の物語。
 
 その音楽は、ストラヴィンスキー作曲による、オペラ/オラトリオ「エディプス王」です。ソフォクレスの悲劇によるオペラ=オラトリオ全2幕。演奏時間は50分ほどとなっています。
 
 ストーリーは、kokiota さんが紹介されたとおりです。オペラですが、演奏以下形式でオラトリオとして演奏しても良いことになっています。台本はジャン・コクトー。ラテン語訳がジャン・ダニエルウです。
 
 ストラヴィンスキーが意識したのは、ラテン語で歌わせるということです。というのも、人々が耳慣れない死語と化した言語を使うことにより、あらゆる卑俗性から解き放たれた、聖なることばとしてラテン語を扱っているのだそうです。
 
 音楽は原始的かつモダンで、起伏が激しく、かなりドラマティックですが、登場人物(特に合唱陣。)は生きた彫像になることを求められ、顔に布を巻いて巻物状の楽譜を持ったりして、あらゆる感情表現を控えるよう要求されています。そうすることによって、古代悲劇の精神のみを現代へ投影しようとしたのかもしれません。


  ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 イゴール・ストラヴィンスキー(1882−1971)
曲名  オペラ/オラトリオ「エディプス王」
マイナー度★★★
難易度★★★
ファンタジー度★★★★
聴かなきゃ損度★★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!


ファンタジーなクラシック61

 2日にかけてやってきましたお酒の神様バッカスに関するクラシック音楽、今回でとりあえず終わりとします。トリをつとめるのは、かのドビュッシーと並び称され、ボレロで高名なフランスのラヴェルが書いたバレー音楽「ダフニスとクロエ」です。これは以前に牧神の特集でもとりあげましたが、再びの登場です。
    
 なぜなら、第2組曲(バレーの第3幕)において、ダフニスとクロエの2人を祝福するための踊りが始まりますが、それはバッカス神の祭すなわちバッカナールでもあるからです。バッカスの巫女装束を来た村の娘たちがタンバリンを持って、喜びと悦楽の踊りを踊るのです。
 
 複雑な変拍子とめくりめく転調が、幻想的で祝祭的な雰囲気を醸しだしています。

 さて、ここまで5人の作曲家によるバッカナールをお届けしてきましたが、みなさま、お気づきになられたでしょうか。ドリーブ、サン=サーンス、イベール、シュミット、そしてラヴェルと、みんなフランス人なのです。バッカナールという神話のお祭が、陽気なラテン民族であるフランス人の心の何かに響くのでしょうか。おなじバッカナールでも、それぞれ陽気なもの、異国情緒的なもの、豪放なもの、神秘的、幻想的と、特徴がさまざまです。


      ☆ ∽§∽ ☆


 DATA

作曲者 モーリス・ラヴェル(1875−1937)
曲名  バレー音楽「ダフニスとクロエ」
マイナー度★★★
難易度★★
ファンタジー度★★★★★
聴かなきゃ損度★★★★★

 まこと音楽とは、何ものにも勝る魔法です!




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