平成20年10月12日に行われた「真貝祐司 ザ・カスタネット!!」の第2部・堀井友徳作品展のパンフレットを全文掲載します。
※第1部のプログラムおよび解説も載ります。
華麗なる音色と、情熱のリズム。
真貝裕司 ザ・カスタネット!!
〜情熱のカスタネット〜
スーパーカスタネット、ヴァイオリン、マリンバ、ピアノによる楽しいお話と演奏会
第1部「カスタネットの魅力」
エスパーニャ・カーニ(マルキーナ)
ラ・クンパルシータ(R.Matos/P.Contursi/E.Maroni)
リベルタンゴ(ピアソラ)
グラナダ(A.ララ)
スペインダンスbP(ファリャ)
萩原邸のカスタネット(真貝裕司)
カニのダンス「カスタネットのコンチェルティーノ」(有馬礼子/桐越優)
火祭の踊り(ファリャ)
第2部「堀井友徳の世界」
ヴァイオリンとチェンバロのためのロマンツァ(2000)※本日はピアノによる演奏
チェンバロのためのノクチュルヌ(2003)※本日はピアノによる演奏
カスタネット、ヴァイオリン、ピアノのためのコンサート・アレグロ(2007)
カスタネット、ヴァイオリン、マリンバ、ピアノのためのパミール・ラプソディ(2008)初演
2008年10月12日(日) 室蘭市市民会館
15:30会場 16:00開演
カスタネット:真貝裕司(札幌交響楽団)
ヴァイオリン:佐藤郁子(札幌交響楽団)
マリンバ:水谷明子
ピアノ:小杉 恵
主催:ザ・カスタネット実行委員会 北海道打楽器協会室蘭支部 日本カスタネット協会室蘭支部
後援:室蘭市 室蘭市教育委員会 北海道作曲家協会 北海道打楽器協会 日本カスタネット協会
エスパーニャ・カーニ:マルキーナ作曲、藤田崇文編曲
軍楽隊長などの経歴を持つスペインの作曲家パスカル・マルキーナのスパニッシュマーチです。一般的に言うスパニッシュマーチとは多くがパソ・ドブレというスペインの民族音楽の一種です。パソ・ドブレは闘牛場の行進音楽等に用いられ、舞踊音楽としても用いられたりします。カスタネット、ヴァイオリン、マリンバ、ピアノの編成は藤田崇文氏による編曲。約2分
ラ・クンパルシータ:マトス作曲
ラ・クンパルシータ(La Cumparsita)は、ウルグアイのヘラルド・エルナン・マトス・ロドリゲス(1900-1948)が作曲した、アルゼンチン・タンゴを代表する楽曲。タンゴ楽団のアルバムやコンサートでは必ずと言ってよいほど演奏され、24時間365日、常に世界のどこかで必ず演奏されている、との伝説もあるほど、最も有名なタンゴの一つです。原詩はごく短いものですが、後にアルゼンチン人のパスカル・コントゥルシ、エンリケ・マロニらが別の歌詞を追加しています。約3分
リベルタンゴ:ピアソラ作曲
バンドネオン奏者アストル・ピアソラ作曲のアルゼンチン・タンゴで、ピアソラが70年代にイタリアで活動をはじめた時の作品。リベルタンゴのタイトルは「リベルタ(自由)」とタンゴを合成した造語。約3分半
グラナダ:A・ララ作曲
グラナダはスペインのアンダルシア地方の古都の名前で、スペイン語で「ざくろ」という意味です。ララは、たくさんのヒットソングを書いているラテン音楽の作曲家です。「スペイン幻想曲」という副題のついたこの曲は、ララの憧れの地グラナダへの思いを込めた、大変情熱的な恋の歌です。約4分
スペイン舞曲No.1:ファリャ作曲
ファリャの出世作となったオペラ「はかなき人生」(1905年に作曲、1913年に初演)は、グラナダを舞台にした悲恋の物語で、このオペラには2つの「スペイン舞曲」があります。洗練された美しさとスペイン情緒に満ちた第1番はとりわけ有名です。クライスラーによるヴァイオリンとピアノのための編曲で、さらに広く知られるようになりました。約3分半
萩原邸のカスタネット:真貝裕司作曲
2007年の秋に、東京・世田谷区の登録文化財、「萩原邸」でのサロンコンサートで発表されたカスタネットの独奏曲です。「萩原邸」は大正13年、日本を代表する建築家遠藤新によって設計された私邸で、真貝裕司は、大正ロマンあふれるその佇まいにおおいに触発され、落ち葉の舞い散る様子をカスタネットで斬新に表現しました。この曲は演奏者の「動作」にも注目してお聴きください。約5分
カニのダンス「カスタネットのコンチェルティーノ」:有馬礼子作曲、桐越優編曲
原曲は、有馬礼子氏が室内オーケストラのための“沖縄(ちゅらうみ)水族館・「カーニバル」”というタイトルで沖縄の楽器「三板(さんば)」のために書いた曲です。2007年5月に、作曲者自身により、カニのダンス「カスタネットのコンチェルティーノ」として書き改められ、真貝裕司に献呈されました。沖縄の音階が使われており、水族館でのカニの泳いでいる姿や動作の様が表現されています。約6分
火祭りの踊り:ファリャ作曲
スペイン近代の作曲家マヌエル・デ・ファリャは、ジプシーの舞踊家インペリオの依嘱によって13曲から成るバレエ音楽「恋は魔術師」を作曲しました。初演は1915年で、情熱的なジプシー娘の恋を、死んだ男の幽霊が邪魔をすると言うストーリーです。なかでももっとも有名なのがこの曲です。悪霊払いのために行われる火祭りの踊りの音楽で、燃えさかる火の描写から徐々に激しさを増してゆきます。カスタネットが奏者自身によるアドリブ演奏で炎の色彩感を表現してゆきます。約5分(解説 真貝裕司)
「ロマンツァ」(2000)
元来はヴァイオリンとチェンバロのための作品であるが、その楽譜のままピアノでも演奏できるため今夜はピアノバージョンでお送りする。私の初期作風(ポピュラーを意識した)の代表作でもある。初演は2001年ヴァイオリンのフェデリコ・アゴスティーニ氏(元イムジチ合奏団コンサートマスター)チェンバロの岡田龍之介氏のジョイントコンサートで行われ、自作の中では最もメモリアルな作品であった。標題どおりロマンチックな作品である。前半は歌謡風なメロディ主体、途中カデンツァを挟み、アレグロで終わる。約10分
「ノクチュルヌ」(2004)
元来チェンバロソロのために書いた作品だが、長らくお蔵入りになっていたもので、この機会に今夜は代わりにピアノバージョンで初演となる。チェンバロ用なので使用音域も狭く、ダイナミズムや動きもピアノのように派手さはないが、淡々として素朴な曲想と、和風を意識した響きに身を委ねていただきたい。ノクチュルヌとはフランス語で、「夜想曲」のこと。約8分
「コンサート・アレグロ」(2007)
この作品は、2005年に青森、岩手の二県で初演された拙作「津軽三味線とチェンバロのための演舞組曲」の中から、二つのアレグロ楽章を、カスタネット、ヴァイオリン、ピアノの三重奏に2007年秋、本日と同じ奏者の演奏を前提にリライトしたものである。原作はその特殊な編成ゆえに再演の機会が少ないため、洋楽器でのリライトに着手した次第である。原作では制約が厳しかったが、より厚みを増して華やかなサウンドになったと思う。第一楽章「アレグロ・リトミコ」 第二楽章「アレグロ・バルバロ」から成り、自分としては異例な作風で大変苦労した作品であるが、ロック的なノリと民族的なフィーリングでお聞きいただければ幸いである。約8分
「パミール・ラプソディ」(2008)
中国新疆ウイグル自治区の民族舞曲「パミールの春」を素材として、 ラプソディ(狂詩曲)として編み上げた作品。原作の詳細は不明であるが、いわゆるジプシー音楽の「チャルダッシュ」の形式、つまり緩やかで哀愁帯びたラッサン、急速なテンポによりフリスカで構成されているのも興味深い。今作では、この原曲に序奏やカデンツァを配したり、メロディを発展拡大させたり色々工夫を凝らしてみた。当夜の演奏会のために書かれたため、カスタネット、ヴァイオリン、マリンバ、ピアノという編成でよりエキゾチックさが強調され、ダイナミックで華麗に仕上がったと自負している。約8分 (解説 堀井友徳)
演奏者・作曲者プロフィール
真貝裕司(しんがい ゆうじ) カスタネット
1951年 新潟県長岡市生まれ。6才の時に北海道室蘭市に転居。北海道室蘭栄高等学校卒業。武蔵野音楽大学音楽学部器楽科(打楽器専攻)卒業。卒業と同時に札幌交響楽団に入団。2006年 『日本カスタネット協会』を設立。現在、ティンパニー・打楽器奏者としてのオーケストラ活動のかたわらソロ、アンサンブルで数多くの演奏会に出演。また、各地のアマチュア・オーケストラや吹奏楽団での後進の指導にも幅広く活躍。札幌交響楽団ティンパニー・打楽器奏者。北海道教育大学岩見沢校非常勤講師。北翔大学非常勤講師。北海道打楽器協会理事長。日本カスタネット協会会長・カスタネット奏者。プレイウッド・アドヴァイザー。打楽器アンサンブル”coup de baguette"音楽監督
佐藤郁子(さとう いくこ) ヴァイオリン
東京藝術大学卒業。現在札幌交響楽団団員。これまでにヴァイオリンを村山英孝、井上儒、富岡雅美、内田輝、清水高師に、室内楽を苅田雅治、田中千香士、岡山潔、川崎和憲の各氏に師事。
水谷明子(みずがい あきこ) マリンバ
武蔵野高等学校、武蔵野音楽大学を卒業。学内の卒業演奏会に出演。日本打楽器協会主催打楽器新人演奏会にて特別賞を受賞。大学卒業後、東京都内を中心にマリンバ奏者として親子劇場コンサートや学校公演などで全国を巡演するほか、打楽器奏者として各オーケストラの演奏に参加する。1995年より札幌に本拠地を移し、札幌交響楽団のエキストラ奏者、ロビーコンサート美術館コンサート等、数々の演奏活動を行う。また、後進の指導にも励む。高橋美智子、鶴岡たみ子、柳沼てる子、塚田靖の諸氏に師事。
小杉 恵 (こすぎ めぐみ) ピアノ
北海道教育大学札幌校芸術文化課程音楽コース卒業。1995年、札幌市民芸術祭新人音楽会に出演し、札幌市芸術大賞を受賞。1996年、HIMES海外派遣コンクール第2位。卒業後、ハンガリーリスト音楽院にて研鑚を積む。帰国後はキタラのスプリングコンサートや札幌市民ロビーコンサートなど、ソロ、室内楽奏者として活動を行っている。また音楽セミナー、コンベンションなどで公式伴奏者を務める。現在、札幌国際大学短期大学部、藤女子大学にて非常勤講師を務める。ショパン協会北海道支部、ハイメスアーティスト、2000番の会Zongoraの会各会員。
堀井友徳(ほりい とものり) 作曲
1973年生。苫小牧出身、在住。東京音楽大学において、2006年に惜しくも亡くなった日本を代表する大作曲家・伊福部昭に主に師事。伊福部昭最後の弟子として知られる。現在は苫小牧において作曲活動の傍ら、「HORII MUSIC ROOM」を主宰。社団法人日本著作権協会会員、北海道作曲家協会会員、道新文化センター講師。その作風は美しいメロディとポップなリズム感に富み、一方シリアスな作品まで、バラエティ豊かで幅広い。
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