ナッシュビル 〜暁のアリーナ〜
原案/イラスト:BAD
作:九鬼 蛍
第2話「放浪の哀翠」
その日、アリーナは、師のオクツキより命じられた任務により、ナッシュビルを首都とするクラウニンシールド伯爵領より王都カーリオンを経由し、スポールディング男爵領へ入っていた。
遙か東方より武者修行と逃亡を兼ねて諸国を巡っている東方剣士・奥津城鬼太郎(おくつき おにたろう)とアリーナが出会ったのは、偶然とも運命とも云えるものだった。その出会いより、既に10年が過ぎ、アリーナは東方剣の使い方のみでなく、オクツキが開発し、伝承する格闘術、槍術、棒、杖、鎖鎌、手裏剣、弓、馬術、水泳に到るまで、さまざまな武術をたたき込まれた。それは、純血の鬼族(こちらで云う魔族)であるオクツキの編み出した驚異の殺人術とでも云えるもので、その名も「殺人神流」という総合武術であった。アリーナが半魔族という強靱な肉体を覚醒させていなくば、とてもではないが、耐えられぬほどの荒行に彼女は耐えた。そして、免許皆伝を迎えようとしていた。全魔族を憎んでいるはずのアリーナにとって、オクツキとの日々は、逆にかけがえの無い経験となった。
このころには、オクツキは再び一人で行動することを好むようになり、アリーナは冒険者としてフリーの活動をしつつ、師の持ってきた仕事をこなすようにもなっていた。オクツキ師は、どこでどうコネクションがあるものか、実に様々な仕事を持ってくる。その中には、血で血を争う裏の仕事も、ずいぶんとあった。アリーナの、実の父親ゆずりの赤髪と、サラマンデル革の緋色の軽装甲は、人の血で染め抜かれていると云われるまでにもなった。
しかしアリーナはそんな戯言はまったく意に介していなかった。全ての日々は、自らと同じ朱色の髪、同じ黄金の瞳をもつ、呪わしき実父・魔族スマウグを倒すためにある。
さて………。
任務というのは、実に単純なものだった。スポールディング領内はどこまでも続く森林と湖沼、湿地の土地であり、平地は少なく、領内の主力産業は亜人のフェイ種より自治権付与の代わりに献上される特殊な織物「ゴッサマー」の売買による。それ以外は狩猟、林業、焼畑などの、実に地味な自給自足的産業しかなく、とてもではないが男爵家の台所も火の車である。それを救っているのが、七色に輝き、艶やかで美しく、耐火や抗菌、治癒の特殊能力も有する魔法の織物、ゴッサマー織の輸出だった。王国内のみならず、隣国ナインシュランドからもわざわざ買い手が来て、法外な値段で喜んで買ってゆく。ゴッサマーは、重要な外貨会得の手段となっていた。
フェイというのは亜人種の一種で、別名は森の人、妖精の人とも云われている、長命で陽気な人々だが、人間とはあまり接する機会はない。人間の街にいなくもないが数は少なく、変人ならぬ変フェイであることを知らねばならない。
アリーナは、そのスポールディングフェイの某重要人物を、暗殺するよう、命じられたのである。
アリーナは、フェイはこれまで街や冒険で見かけたていどだった。みな同じような(良くできた生き人形のような)金髪碧眼のすらりとした顔立ちをしており、男と女の区別もよくできない。男女の差があるのかと知らない者は思うだろう。傍目には、つっけんどんで、無表情だが、そのくせ、フェイ同士では享楽主義的なところがあり、森の奥で歌って飲んで踊って詩作しての生活をし、滅多に森から出てこない。従って基本的に排他的だ。街で人間と交わるフェイは、相当の物好きで人間世界に興味のある変わり者であり、その者ですら、人間から見たらつっけんどんで無表情であり、また無表情のまましゃべったり笑ったりするので、非常に気味悪がられ、正直、あまり人間はフェイと積極的に関わり合いをもとうとしない。
ゆえに、その自治領「アングルシーの森」とやらがどこにあるのかすら、庶民は知らない。領土の大部分は深い広葉樹林であり、その中のどこかにあるのだが、領主とその側近しか知らないらしい。フェイたちは定住せず、森の中を移動して暮らしているという者もいる。それはゴッサマー織の秘密を護るためだとも云われている。
アリーナはスポールディングに来て情報を収集し、初めてそのことを知った。しかしまさか、城へ出かけていって、「フェイの某重要人物を殺すので、場所を教えてほしい」というわけにもゆくまい。それでなくとも、スポールディングの深き森は、うかつに入れば三日と持たずに遭難してしまう。
アリーナは首都コッツエールズの冒険者ギルドへそれとなく相談した。すると、森の案内人という業種があり、冒険者等を案内するという。猟師でもあるが、それだけではなく、まあサヴァイバル術の達人というか、森の監視人にして道案内役、フェイと人間の橋渡し役、いわゆるレンジャーがこの国には多数いるのだ。
レンジャー「グウィン」との出会いだった。
アリーナは、その若い女レンジャーを金貨五という大枚で雇い入れた。正確には、雇ってから意外と若いことに驚いたのだ。後に、斡旋者にそれとなくそのことを云ったが、彼らは幼いころより親について森の中を駆け巡り、十五ほどで一人前となるというから、若いのは珍しくないらしい。ただし、女レンジャーは珍しいということだった。ギルドはアリーナが女の一人行なので、気を利かせたつもりだった。
金貨五という大枚を叩いたのは云うまでもない。口止め料、込みである。この国の重要産業を担うフェイの不思議な織物は、自治権の見返りなどというのは名目で、実際はフェイとの純粋な友好関係に負うところが大きい。フェイは単純な果実酒以外の酒類を作る技術を持っていないので、スポールディング家から贈られるビールや、ワイン、焼酎のような蒸留酒をことさら愛している。それとて、別にスポールディングのみからもらう必要はない。男爵家では、ゴッサマー利権を独占するため、他国他領の人間が領内のフェイと会うことを固く禁じている。集落の場所が秘密なのもそのためである。まして、そのフェイの重要人物を、暗殺するなどと、あってはならないことだった。
しかしアリーナは、余計な詮索はせぬ。云われた事を遂行するだけだ。相手がなんであろうと、斬って捨てるのみだった。
問題は、大枚を叩いたレンジャーが、少し、境遇の複雑な人物であったということだった。
早朝、晩夏、街はずれのささやかな原野で、二人は、合流した。
アリーナは動物があまり好きではない。線の細い、翠の瞳のその少女は、アリーナより八つも年下の十六ということだったが、落ち着きはらった雰囲気や、森の中のしなやかな身のこなし、なにより決意に満ちた顔つきというのは、とても同年代だった八年前のアリーナとは比べ物にならぬほど大人びており、森へ隠れる暗いグリーンの服へ身を包み、短く幅の広い剣と森ナイフを腰につけ、弓を背負い、腕(リーチ)が長くしなやかだった。木々の合間を矢のように良く走る中型で真っ黒い猟犬を連れ、肩には大きな赤目の白イタチがいた。
「ど、どうも」アリーナはひきつった笑顔でまずイヌに挨拶をした。吠える生き物は特に苦手だった。
「名前は、なんていうの?」
「グウィン」
「グウィン、よろしくね」
「私の名前よ」
「………」
イヌの名前は、けっきょくだいぶん後に、彼女がイヌをモーザドゥーと呼ぶので分かった。(彼女らの言葉で「黒いモーザ」という意味らしい。)
「あ、あの」
「どこに行きたいの」
「あたしはアリーナ」
「そんなかっこうで森を歩くの」
普段着はジャケットにパンツのようなラフスタイルだが、仕事に出るアリーナは緋色の軽装甲へ渋色のマント、それへ潤み色のロータスをひっさげ、最小限の旅道具を腰に回している。なにより、軽装甲を薄地の下着に直接装備しているので、肩だの腿だの、色々と露出している。
「いや、もう、慣れてるから」
「カーリオンやクラウニンシールドあたりの森なんか、こことじゃ比べ物にならないわ。悪いことは云わないから、せめて上着を羽織ったら。あとその刀は背中に回すべき」
「………」物怖じしないのは頼もしいことだと思った。「半魔族」血の色アリーナの(あまり好ましくない)名声も、彼女の住む浮世離れした山奥には届いていないようだ。
「原野用のそのブーツも、後悔するわよ。すべるから」グウィンは軽く足を上げてみせた。同じブーツでも少し短く、膝下で折り曲げられ、足にフィットしているが余裕もあり、ヒールが金属で補強され、スパイクのような鋲が底に幾つか打ちつけてあった。
「ご忠告どうも。それで、フェイの集落地までの路は、知ってるんでしょうね」
「路なんかないわ。あんなとこ。何しに行くの」
「それを云わないと案内しないの? 行けば分かるわ」
グウィンは無言で、歩き出した。どうも、アリーナは人見知り「される」タイプなのだったが、このグウィンという子は特に独特で、誰にでも心を閉ざしているように思えた。まあ、カネは払ってあるし、アリーナは仲間として雇ったわけでもなく、路さえちゃんと案内してもらえれば、何の問題も無かった。イヌが常に足元を走り回るのを除いては。
「…シッ、シッ! 邪魔だわ、このイヌ!」
「邪魔なのは貴女の足音よ。フェイは耳がいいから、三里先からでも貴女の足音に気づいて、行ってしまうわ」
「そこを案内するのも仕事でしょう? よその十倍の代金を払っているのを忘れないで」
グウィンは氷のような眼で振り返って、少し、歩を緩めて歩き出した。アリーナも修行や冒険仕事で山野を歩いてきたつもりだったが、この神域ともいわれるスポールディングの「奥の森」というのは、木々の密度が他国の数倍はあった。山岳も急峻で、王都カーリオンより続く山の中の街道も、コッツエールズより奥は無くなる。つまりナインシュランドとの国境付近まで完全に未踏破の土地であり、レンジャーすらうかつには入れず、フェイのみが自由に行き来できる。
その中のどこかに、アングルシーの森がある。三日、歩き尽くめで、乾パン、干し肉、ドライフルーツなどの携帯糧食をかじり沢の水を補給しながら、やがて大地を見下ろす崖の上に到達した。アリーナは瞠目した。見渡す限り、深い、黒々とした緑の海だ。樹海を揺らして吹き渡る風が心地よかった。秋の近づく天は高く、薄い青だった。空はこんなに青かったかと、アリーナは思った。
「……で、フェイの集落はどこにあるの?」
「分からないわ」三日間、一言も口を開かなかったグウィンが、ソッポを向いてぶっきらぼうに答えた。さすがにアリーナもカチンときた。「ちょっと、いい加減にしないと」無意識に刀へ手をやる。グウィンが視線だけでそれを確認し、「私を殺すと貴女も死ぬわよ。ここから一人で帰れるの。たとえ貴女が無敵の半魔族でも、ここは純血の魔族すら迷って死ぬ神々の森よ」
「……!」アリーナは片眉を上げ、刀から手を放した。「負けたわ。で、マジメに、どうするの」
「現れるのを待つの」
「集落が?」
「そうよ」
「隠されてるってわけか……」納得した。秘術に長けたフェイにより、集落ごと陰形の術が施されているのだ。「思ったより長丁場になるかな……」アリーナはそこらの岩に腰掛けて、休息ついでに眼下の絶景をしばし楽しんだ。モーザドゥーが斑のある長い舌を出して、アリーナの隣へ来てその真っ黒い顔にぽつんとある真っ黒い目で彼女をみつめた。この賢いイヌは、行程中、主人と同じくまったくワンのワの字も出さなかった。アリーナは純血の「グウィネルダ犬」であるモーザの頭をなでてやった。初めてイヌに触った。勇猛果敢で忠実、森を良く駆け、木にすら登り、自分の何倍もあるクマや時には魔物をも恐れぬ。貴族たちにも珍重され、男爵家でも保護している、スポールディングを代表する犬種だった。
さいしょに異変に気づいたのもモーザだった。次にグウィンの肩の白イタチ「ノーリィ」で、それからグウィン、そしてものすごく遅れて、アリーナ。一人のフェイが、彼らの側に忽然と立っていた。
驚いたのはアリーナである。まるで気配を感じなかったし、実際に眼に入っていてもまだ気配を感じない。幻覚かと思ったが、グウィンがフェイへ話をかけたのでそうではないようだ。
「どういう風の吹き回し」
「アリーナさんとは、どちらでしょうか」軽薄そうな笑みと器用な王国語でフェイが云った。その端正な顔立ちが逆に能天気さを印象付けている。しかも、声を聞くからに、女性だった。
「あ、あたしだけど……」
「お迎えにあがりました」アリーナは困惑した。まさか罠だろうか。どこかから、暗殺依頼が漏れたか。意外や、グウィンが色めき立った。
「ちょっと、どういうこと、アリーナ、フェイに知り合いがいるならいると……」
「い、いや、その」すっとぼけつつ、油断無く腰を浮かし、刀へ手をやる。状況がつかめない。フェイがそれへ気づき、さらに明るい笑顔で両手を上げた。「ちっ、ちがいます! アリーナさん、ワタシは依頼主のほうですよおっ!」
「は?」とアリーナが息を飲んだ瞬間、フェイの顔が硬直し、そのままばったりと倒れた。背中には、森で使う短い矢が幾本も突き刺さっている。じわりと血が薄手の衣服へにじんだ。
「ちょ…ちょっと、しっかり!!」アリーナが叫び、近寄ろうとしたが、グウィンが遮った。モーザドゥーが初めて、猛然と吠えた。森の中より、数人のレンジャーが音も無く現れた。
「ミックさん! どういうことッ!」そのグウィンの言葉は、アリーナには分からなかった。彼らの言語だった。彼らグウィネルダ人は、もともと古い異民族である。王国の言葉は隣国ナインシュランドと共通でナイン語とでもいうべきものだったが、彼らはかなりナイン語と混じってはいるが、未だに特有の言語体系を駆使している。
「チェルシー、悪いことは云わねえ、ここは黙ってその赤い髪の悪魔を置いて去れ」
「なにがあったの? まさか父さんが……?」
「安心しな、ロビンは関係ねえ、たとえ、男爵家に尻尾を振った裏切り者でもなあ!」
グウィンの顔が苦悶に歪んだ。
「チェルシー、いいか、これは、男爵家への復讐のうちなんだ、俺達の誇りの問題だ」
「誇りの問題ですって?」
「そうだ!」
グウィンは目を吊り上げて叫んだ。「誇り高きグウィネルダは、男爵の目こぼしや、フェイの布キレなんかでこそこそとカネをもらったりしないのよ!!」グウィンは腰の剣を抜き払った。幅が広めな小剣だった。グウィンの体格に合わせているのだろう。腰の後ろには短剣も装備してあり、ふだんはこちらを大型ナイフとして使っている。
レンジャーたちもそのグウィネルダ人特有の長い腕で弓弦を絞った。頭目が、射るな、と制した。「おい……チェルシー……おまえ、どこまで知っていやがる……その赤い髪の悪魔から何か聞いたのか?」
「アリーナは関係ないわ。私にも、情報源くらいある」
「まだ遅くねえ、こっちへ来い、殺したくねえ!」
「そっちへ云ったら、もう二度とグウィネルダの誇りなんて語れなくなる! あんたたちアルカウ家は、グウィネルダの恥さらしだわ!」
頭目が眼を向いた。「このガキ……! どっちが恥さらしだ! 男爵の犬の娘が!! お館様を侮辱しやがって! かまわねえ!」
そう云った瞬間、走りこみざまの居合の一閃で、頭目の喉が真一文字に斬り裂かれた。「…っぁ…」頭目はクルミの実のように眼を見開き、血を噴き出して、後ろに倒れた。ロータスを振りかぶり、次々とアリーナは残るレンジャーにも襲い掛かった。モーザも素早く一人の弓を奪った。三人、斬り倒して、残る二人は何か云いながら逃げ出した。
「説明して」アリーナは切っ先をグウィンへ突きつけて云った。しかしグウィンは興奮を押さえ込むように、剣を納め、つぶやいた。「逃げるわよ」
「説明しなさい!」
「後でするから! ほら、もう来たわ」
木々の合間より天へ向かって放たれて、弧を描き、雨のように矢が降ってきた。「うわっ…!」アリーナはすくみ上がった。さすがにこの量の矢を防ぐ手立てはない。「こっち!」グウィンが素早く、岩陰から崖下へ続く獣道へ誘った。アリーナは急いで岩陰へ入り、崖下を覗き込んで呻いた。彼女やモーザには道でも、アリーナにはただの断崖だ。ロープも無しにこのようなところを降りるのは不可能だ。「早く!」降りかけているグウィンが下から叫ぶ。アリーナは躊躇した。オクツキ師ならば飛鳥のように駆け下りることもでき、その術も伝授されてはいるが、こんな高い崖で試した経験はない。天を降りる心持だった。
矢はどんどん飛んできた。岩陰になっており、かろうじて助かっている。しかし、長い放物線を描いて、石つぶてが飛んできた。投石器、スリングだろう。しかも驚くべきことに、石は見当違いの所にぶつかったと思いきや、正確に跳ね返って、真横から岩陰のアリーナを襲った。跳弾攻撃だった。不意をつかれたアリーナはこめかみに思いきりそれをくらい、眼から火花が出て、真ッ逆さまに崖を落ちた。
アリーナは目を開けた。真っ暗だった。夜か。それとも、洞窟か何かの中か。ひんやりと湿って、寒いくらいだった。自分の体温も、相当、下がっているようだ。
「グウィン……グウィン」
「気がついたの」
「ここはどこ?」
「あの高さから落ちてよく無事だったわね。さすが魔族の血を引いているだけある」
「だから、ここはどこなの?」
「遺跡よ」
「遺跡?」
「そう……古いグウィネルダの山城の跡」
アリーナは大きく息をついた。さすがに、頭が痛い。身体も、あまり動かなかった。自分は、柔らかい草の上に寝かされている。グウィンが運んでくれ、草も用意してくれたのだろう。
「ありがとう……助かった。洞窟があって良かった」
「洞窟?」グウィンが近づいてきた。モーザの息づかい、気配もした。「ここは外よ。それにまだ日は暮れていない」
「ええ?」アリーナは眼を細めた。「アリーナ、私の手が見える?」
「いいえ…」
「一時的なショックよ。休んでいればきっと治る」
「まさか……わたしは、目が見えないの!?」愕然とした。慌てて起きて、手探ったが、まったく真っ暗闇だ。「なんてこと……!」
「休んでいれば大丈夫」グウィンはあくまで冷たく云い放った「それよりアリーナ、貴女の仕事も説明してもらう必要があるわね」
嘆息と共に、アリーナは再び横になった。頭痛が酷くなった。休んでいれば治るなど、気休めにもならなかった。いま、あのレンジャーに襲われたら、為す術がない。
「なんてざま……今まで何を稽古していたのだろう」アリーナは情けなくなって泣きそうになった。
「アリーナ、答えて」
「あなたこそ、チェルシーって本名? グウィンって名前は、グウィネルダ族からとった偽名? あのレンジャー達との関係は?」
「……お互いの情報を呈示し、整理する必要があるようね」グウィン……いや、チェルシーは、膝を折ってアリーナのそばに座ったまま、抑揚の無い声で淡々と話し出した。
「グウィンはギルドの登録名よ。本名はチェルシー。グウィネルダで、貴女たちカリヨン人に最初から本名を教えるバカはいないわ」
「悪かったわね」
「いまカーリオンとよばれているこの国は、かつて、私たちグウィネルダ人が治めていた地だった。貴女たちが建国の七英雄と呼ぶ、王家と六貴族の祖先は、グウィネルダからしてみれば立派な侵略者よ。この山城は、当時の戦場跡。まだ骸(むくろ)がころがっている」
「そう……」
「興味、なさそうね」
「二百年も前の話よ」
「私たちは肥沃な大地を奪われ、二百年間、森でサルみたいに生きてきたのよ」
「あたしには関係のない話だわ」
「まあね」アリーナは意外だった。チェルシーが怒ると思ったから。
「その戦いで、フェイたちがカーリオンの味方をしたの。この山城も、フェイに間道をリークされて滅んだ。そういう遺跡があちこちに残っている。それで私たちはフェイも憎んでいる」
「でもそれは、あんたたちが俗信でフェイを迫害していたからでしょう?」
「……!」チェルシーが、小さいが鋭く息を飲むのが分かった。目が見えなくなったせいか、感覚が、研ぎ澄まされてきている。
「森の堕落者……若者を凋落し、神隠しにする妖精人……フェイ狩りもやっていた」
チェルシーは何も云わなくなった。その無言が、事実を裏付ける。
「でも誤解しないで。何の感慨も無いから。現に、あたしの仕事は、そのフェイのとある重要人物の暗殺よ」
「何て人」
「なにが」
「殺す相手」
アリーナはやや黙っていたが、やがて答えた。「名前だけ云われた。アルジャーハイム家のアロンソ」チェルシーがすっくと立った。
「ぜんぶ分かったわ」
「どういうこと?」アリーナは半身を起こした。そのアリーナを、抱きつくようにしてチェルシーが押し倒して地面へうつ伏せた。驚いたが、瞬時に、バチッ、バチッと、遺跡の花崗岩へ鏃が突き刺さって跳ね返る独特の音が続々とした。音により相手の居場所を見定めるため、モーザは吠えない。代わりに白イタチのノーリィがシャッと唸って、奥へ駆けた。引きずるようにして、チェルシーがノーリィの行く先へアリーナをいざなった。アリーナはたまらず匍匐前進のようなかっこうで、矢の雨の下を這った。
「ここにいて」角を幾つか曲がり、矢の届かない位置まで下がると、チェルシーは素早く戻った。うまく陰に身を潜め、矢筒と弓が一体となった「弓矢セット」と云えるものを背中より下ろし、トリネコの木による小型のコンポジットボウ(複合板弓)へ矢をつがえ、引き絞った。チェルシー用に特別にあつらえた物で、小さいが威力は人間相手には男性用と遜色ない。細腕だが鍛えぬかれた鋼のごとき背筋を使って一気にカモシカの腱でできた弦を引いて、サッと森へ向かって射た。短い悲鳴と共に物体が木から落ちた。とたんに、そのチェルシーめがけ、あり得ない量の矢が断続的に飛んできて、チェルシーは動けなくなった。アリーナの元へ戻ろうにも、動けない。遺跡の陰に身を潜め、叫んだ。
「……しまった! こっちは陽動だわ!」
アリーナは片膝をつき、ロータスの鍔元を左で握りしめ、柄へ軽く右手をそえ、離れた場所の矢の音をジッと聴いていた。頼るモノは耳しかない。息が荒くなった。その自分の息の音で、矢の音が聴こえなくなった。慌てて息を止めた。すると心臓の音が耳の奥でガンガン鳴った。まったく状況が分からない。自分がいかに今まで眼に頼っていたか思い知った。
「どうしよう……先生! どうしよう!!」
純血の魔族ゆえ、一定の歳よりある日、突然と寿命で死ぬまで老化しない、精悍で覇気に満ちたオクツキ師の厳しい眼差しと、光沢が緑に光るカラスの濡れ羽のような長い黒髪が、暗黒の脳裏に蘇った。そして、殺人神流免許皆伝の条件を、思い出した。
「シン・ガン?」
「そう、心眼だ。心の眼という意味だ。それが何かは具体的には説明できない。感じるしかないものだ。おまえの母のいた、はるか東方の国の武芸は、すべて最後はそこへ行き着く。もっとも言葉だけで、本当に心眼を観ることのできる者は少ない……」
「それがマスターの条件ですか?」
「そいうことにしておく」
「先生は観れるのですか?」
「そういうことにしておく」そう云って、厳しい眼差しがふいに緩み、オクツキは豪快に笑い出した。アリーナも、久しぶりに声を出して笑った。
その師匠の深い眼差しを思い出すと、急激に呼吸が整った。気が研ぎ澄まされ、モーザドゥーが自分を心配して、周囲の薮を偵察し駆けているのが分かった。なんとこの細く小さい気配はノーリィである。白イタチはアリーナの足元で、背後に向かって威嚇している。
「…!」自動で体が動いた。まさに無想の境地か。背中に一瞬、殺気。既に気配を消してレンジャーの暗殺部隊が挟撃してきていた。前方の射撃の雨は囮だ!
立ち上がりざま、右手で刀を引き抜き、さらに左で鞘を引き絞る。体(たい)が一気に開いて、その場で大きく横なぎに刀が振られた。抜いた刀の柄頭と、引いた鞘のこじりが背中でぶつかったほどである。その一撃はアリーナへ毒の塗られた短剣で迫っていたレンジャーの胸を豪快に斬り裂いた。「ギャア!」レンジャーが凄まじい悲鳴を発した。その声で動揺したのか、周囲のレンジャーの気配が、次々に発覚した。本職の暗殺者ではないのだから、無理も無い。
あとは、アリーナにとって「眼をつむっていても」敵ではなかった。一人、二人と斬り倒され、三人目も果敢に背後より応戦してきたが回し蹴りから肘当て、膝蹴り、最後に真っ向から顔面を割られ、斬り伏せられた。四人目は完全に錯乱し、グウィネルダ語でなにやら叫び手当たり次第に石やら枝やらを投げつけてきた。アリーナは先日のお返しにと、飛んできた石を見えないはずの眼前でハッシと受け、素早く手裏剣の要領で投げ返した。小石はレンジャーの眉間にめり込んで、喚き声が聞こえなくなった。
まだいる。五人めだ。接近戦ではとてもかなわぬと距離を置き、弓を引き絞っている。そもそもレンジャーは中遠距離攻撃が本領で、その射撃の腕前は侮れない。アリーナは警戒したが、その弓をもつ腕へ唸り声と共にモーザが飛びついた。「うわあッ、イヌめえッ」さらにその鼻面にはノーリィがかじりつく。もう言葉にならぬ。アリーナが片手で下段に構えたまま走りこみ、振りかぶった瞬間、二匹はバッと男から離れた。男はアリーナの盲目の剣士のような崇高な姿を最後に見て、袈裟に斬られ、ばったりと臥した。
アリーナは、細くゆっくりと息をついた。まだチェルシーは矢の連射にさらされている。モーザがアリーナを先導した。納刀し、森の中を回り込み、チェルシーへまさに矢継ぎ早に射かけるレンジャーへ、逆挟撃した。木の上や大樹の陰より遺跡を攻撃するレンジャーたちは、アリーナの接近にまるで気づかなかった。七人もの射手が、たちまち斬り伏せられた。「ひっ、ひいい!」枝の上の一人が、弓を捨てて降りてきた。「タッ、助けてくれ、降伏する!」アリーナは左で胸ぐらを掴み上げた。「吐けば考えてやる!」レンジャーは半泣きでべらべらとしゃべり出した。
「おれたちはアルジャーハイム家から頼まれたんだ! アルジャーハイム家は、ナインシュランドの商人と組んで、ゴッサマーを横流ししている! おれたちはその仲介で、カネをもらってるんだ! だっ、だから……!」
「そういうこと。ありがと」アリーナは、サッとレンジャーを離すや、片手平突きで下段から物も云わせず突き上げた。切っ先はレンジャーの顎の下より入り、脳天を貫いて、静かに引き抜かれた。
「残念ながら、あんたも料金の内だったわ」
矢の攻撃が止み、チェルシーはそっと遺跡の陰より現れた。モーザがそれを呼ぶ。急いで走ってきた。「ぜんぶ倒したの!? まさか、眼が見えないのに……!」
「お蔭様で、心の眼を感じることができたから」
「心の眼……?」
「それより、次はあなたが説明する番よ」
チェルシーは珍しく心を揺らし、しどろもどろしていたが、やがて意を決したように話し出した。「……ゴッサマーを管理しているのは、スポールディングフェイの宗家、ミージャハーム家。アルジャーハイム家は、アミルダ女当主の弟の一族。アロンソはその総領。ゴッサマーをナインシュランドへ横流しして、不当な利益を得ている。それを表立たせずに処理するため、ミージャハーム家とスポールディング男爵家より、アロンソの暗殺依頼が出た……その為に来たのが、アリーナ、貴女よ」
「それは、誰から」
「……父さん」
アリーナは少なからず意表をつかれた。「お父さん? あなたの? 男爵とどういう関係?」
チェルシーは吐き捨てるように、云った。「父さんは、男爵に一族が代々引き継ぐ神の森を、狩場として与えて、自分は男爵の手下になって、ぬけぬけと森の管理人をしている!!」
アリーナは納得した。チェルシーの得た情報は、彼女の父親経路で、男爵本人から出ている。つまり、グウィネルダ内でも、一族や、男爵派、反男爵派などで、複雑に対立しているのだ。
チェルシーは堰を切って続けた。「しかも、しかもよ、ジョージ伯父さんも、アミー叔母さんも、フェザー叔父さんも、みんな父さんの味方なの! どうして!? みんなどうしてなの!?」
「チェルシー……」アリーナは確かめるように云った。「お父さんはあなたの一族郎党の当主なのね、家族は多い?」
「六人姉妹。私は三番目。男がいないから、私が跡を継いでレンジャーに。それがどうかした」
「じゃ、たぶんだけど」アリーナは肩をすくめて見せた。「それは、家族の……いいえ、あなたたち子どもらのためよ」
「……!?」チェルシーは美しい茶金の眉を物が挟まるほどひそめた。「……なに云ってるの、適当なことを云うと承知しないわよ!」
アリーナは臆せず答えた。「チェルシー、男爵の直参ともなれば、そうとうの知行よ。一族の子弟には、王立学校での教育の機会も与えられる。ただの在野レンジャーと、男爵家お抱えレンジャーとでは、天と地の差のはずだわ」
「……ッ!」歯を食いしばって、チェルシーは下を向いた。アリーナは、目は見えずとも、そんなチェルシーの様子がありありと感じられ、微笑んだ。「あなたも分かってるのね。でも頭では分かっても、心ではお父さんが許せないのね。誇り高いグウィネルダの娘なのね、チェルシー」
「……う……」チェルシーがいきなりぽろぽろと大粒の涙をこぼして、すぐに大声で泣き出したので、アリーナは困惑しつつも、ますます微笑んだ。「強がって家を出て、一人前のレンジャーとして働いていても、まだ子どもね」アリーナはチェルシーを抱き寄せた。そのふくよかな胸の中で、チェルシーは何かのつっかえがとれたように、泣きじゃくった。
「もうグウィネルダも変わる時代だわ。いえ、変わっていい時代なのよ、チェルシー。新しい生き方を、見つける時がきたのよ」チェルシーは激しく嗚咽をもらすだけだった。
「そうだ!! 我々は変わるんだ!!」二人は息をのんで声のほうを向いた。斬り伏せたはずの一人が、血の吹き出る肩口をおさえて、立っている。チェルシーが素早く短剣を抜いた。「ただし、おれたちは男爵家にはつかねえ! ナインシュランドの王様が味方だ!」
「騙されているだけよ」チェルシーを下げて、アリーナが刀へ手をそえつつ、身構える。
「男爵に騙されるよりマシなんだよオ! 血で染めた赤髪の悪魔め! お前が死ねば、これまで通りアロンソはナインシュランドとよしみを通じ続けられる! やがて男爵家は……カーリオンはナインシュランドに滅ぼされるだろう! わが命を喰らい、いま甦れ、グウィネルダの牙よ! わが名はファールアイフなり!」そのまま、男は自らの短剣で首を掻っ切って、目を剥いたままひっくり返った。アリーナは意味が分からなかったが、チェルシーが涙も止まってわなわなと震え出したので、様子がちがうと思った。
「……どういうこと?」
「グウィネルダの牙……まだ、動くのがあるの!!」
「だから、どういうこと!?」
「古の兵器よ……昔のグウィネルダの魔法使いが作った、魂をもたない殺戮人形。グウィネルダの真の名で、動きはじめる」豪快に岩の転がる音がして、遺跡の一部が崩れ、土埃の中から、木と石と鉄で作られた、巨大なカカシのような物体が現れた。頭には石のヘルメットが彫像のように乗っており、暗黒の顔の中に赤い一つ目が光っている。左手は大きな、アリーナの脚ほどもある金属弦のクロスボウになっており、右手には同じく人の身長程の巨剣が握られていた。二百年も昔の兵器のはずだが、金属部の腐食もなく、ギャッとすごい金切音をたてて弦が自動的に引き絞らさり、人の腕ほどもある矢がこれも自動で内部より出現してセットされ、すぐさま二人に向けて発射された。アリーナとチェルシーは咄嗟に伏せて避けたが、後ろの大木が矢の直撃で幹が爆発したように弾け、そのまま一気に倒れてきた。チェルシーが悲鳴をあげ、アリーナは起き上がってチェルシーを引きずって間一髪、倒木から救った。
「なんなの!?」アリーナは動く気配のみで、まるで生き物の気を感じぬ相手に、驚いた。せっかくの心眼も、勝手が異なる。
「逃げましょう、逃げるのよアリーナ、あれは私たちでは倒せないわ!」
しかし、もう、このゴーレム兵器は蒸気を噴出し一足飛びで接近して、剣を振り上げている。動きが豪快なため、かろうじで避けることができたが、周囲の木々はきれいに伐採された。言語を絶するパワーである。アリーナは直感した。
「逃げるのは無理よ、チェルシー、あなた、グウィネルダなのだから、止めることはできないの!?」
チェルシーは躊躇した。
「チェルシー!!」返す剣でチェルシーが胴切りにされたと思われた瞬間、アリーナが、巨剣を白刃取りで肘と膝で挟み込み、怪力で押さえ込んで止めていた。魔族の血がさらに覚醒される。ザワザワと朱色の髪が蠢き、リボンが千切れた。見えぬはずの眼も、さらに黄金に輝く。しかし剣は次第にアリーナをもち上げはじめた
「チェルシーッ……! 限界だわ……!」
アリーナが一気に宙へ持ち上げられ、そのまま大木へ向かって叩きつけられた。
「止まりなさい! わが名はピュイーネなり!」グウィネルダの牙は、アリーナを大木へ叩きつける寸前で、空気が抜けるように動かなくなった。赤い光の一眼も消えた。さすがのアリーナも、この勢いで巨剣と大木に挟まれていたら、ただではすまなかったろう。どっと冷や汗が流れ、頭がクラクラするほど血の気が下がった。「………助かった………」しばし荒く息をついた。大木と巨剣の隙間にいるかっこうであったが、なんとか、剣を押し退け、地面へ降りた。とたん、緊張がとけたのか膝が笑って、地面へ手を突いた。再びチェルシーがぐすぐすと泣いている。
「ごめんなさい……ごめんなさい、アリーナ……私……私……」
アリーナは膝へ手を当て、立ち上がり、チェルシーの頬へ手を当てた。「何を泣くの?」
チェルシーはアリーナを見上げた。「私……ためらった……アリーナを、危険なめに……」
「何を云ってるの。あなたのお陰で助かったのに」
「ごめんなさい……真の名を……グウィネルダの真の名でしか、こいつは動いたり止まったりしないの……でも、真の名は、人前では云ってはいけない……云う時は死ぬ時……両親と自分しか知らない名前なの……だから……私は………!」
アリーナはその深い茶金の髪を撫でた。「私は何も聴かなかったし、それに、もう、あなたはあたしの家族も同然よ」
「アリーナ……!」チェルシーはアリーナへ抱きつき、再び泣き崩れたが、それは、悲しみの涙ではなかった。
スポールディングフェイの名門、アルジャーハイム家の当主アロンソの斬殺体が見つかったのは、それから二日後のことであった。アングルシーの森へたどり着いたアリーナとチェルシーは、ミージャハーム家の女当主アミルダの歓待を受けた。質素ながら底抜けに明るい、歌と踊りに、手品漫才演劇の宴会が七日七晩続き、貴重な天然糸のゴッサマー織による布ポーチがチェルシーに贈られた。アリーナへは(男爵家からの報酬カリヨン金貨三百枚の他に)古のフェイの金貨五十枚(カリヨン金貨二百枚相当)が、さらに天然糸のゴッサマーのリボンが贈られた。また、うすぼんやりと見えるようになってはいたが、今だ回復していないアリーナの眼の治療に、ゴッサマーの包帯が巻かれた。なんと一刻もせぬうちに、アリーナの眼は完治し、再び完全に見えるようになった。その魔法の包帯もアリーナへ贈られた。
ゴッサマーは、この森にしか住んでいない、いうなればアングルシーゴッサムクモとでもいえるクモの糸を朝露のついているうちに採取し、秘法をかけ秘術により織られる魔法の織物である。クモは既に養殖されており、安定供給ができるが数は多くない。まして、天然糸のゴッサマーは、一斤が金貨千も二千も、それ以上もするのである。
二人は、初めて会った、首都コッツエールズ郊外の荒れ地に再び立った。仕事は終わり、別れの時である。
言葉は少なかった。もう、何も云わずとも、何を云いたいかが分かっていた。しかし、静かに首都へ戻るアリーナへ、ついにチェルシーが叫んだ。
「アリーナ! いつか、チームを組んで旅して仕事するんでしょ!? そのときは、絶対に私を入れてね! 約束だから! 絶対に役に立つから!! 約束だから!!」チェルシーはまた、その新緑の瞳より、涙をこぼした。その涙をぬぐいながら、大きく大きく手を振った。別れを惜しむように、モーザも遠吠えのように吼えた。アリーナは振り返り、「分かってるわ!」そして声をださずに、呼びかけた。
「じゃあね、ピュイーネ、また会いましょう」
了
次回予告!
剣闘士フルンゼは18年の奴隷生活を終え、復讐を決行しようとしていた。しかし、奴隷商人ウィットマーシュは既にかつて邂逅したアリーナに倒されていた。行き場の無いフルンゼの怒りと憎しみが、アリーナへと向けられる。次回「白き鬼神」
よろしくお願いしますー(^ω^)
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