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 またまた不気味社の伊福部関係を聴く。(1枚は読む)

 婆羅陀魏山神 ~バリトンによる伊福部歌曲集其二~
 豪快ファンタジー ゴジラVSメカゴジラ
 SFSF考

 この3枚。

 なお、最後の1枚は音楽CDではなく、PCで再生する音応解所長のF公共ファンタジー考察であり、CD-ROMらしく不気味者の音源を再生しながら考察を読むことができるもの。

 まずは1枚目。

 バリトンの北村哲朗による、伊福部の映画の中の歌唱を歌曲のとして再現する規格の第2弾。「婆羅陀魏山神 ~バリトンによる伊福部歌曲集其二~」である。

 収録曲は、以下の通り。不気味者のHPより

 1.婆羅陀魏山神(「大怪獣バラン」M5)
 2.婆羅陀魏讃(「大怪獣バラン」M1)
 3.母のない子の子守唄(「わんぱく王子の大蛇退治」No.4)
 4.海の魔神~復讐の歌(「鯨神」No.1,2)
 5.マッコウ亭(「鯨神」PS.2)
 6.刃刺し踊り壱(「鯨神」PS.3)
 7.刃刺し踊り弐(「鯨神」PS.4)
 8.杏花之歌(詩経から「桃夭」/「秦・始皇帝」PS.)
 9.摽有梅~梅の実(詩経/「奇巌城の冒険」PS.1)
 10.平和への祈り(「ゴジラ」PS)
 11.千古の子守唄(「ゴジラVSメカゴジラ」M22)
 12.ファロ島(「キングコング対ゴジラ」M7)
 13.巨大なる魔神(「キングコング対ゴジラ」M1,8)
 14.マハラモスラ(「モスラ対ゴジラ」PS.99)

 ※一部、特殊文字があるので、環境によってはうまく表示されていないかもしれません

 前作の第1弾「あはれあなおもしろ」が、特撮以外の時代劇等の歌も多く、やや初心者にはむずかしい面もあったが、今回は特撮曲(SF交響ファンタジー(以下単に「SFSF」という。)にも通じる曲)が多く、あまりサントラに詳しくない人でも、充分に楽しめるのではないだろうか。

 まず、勇壮にして格調高いバラダギ様に手を合わせる。サントラやSFSFとも異なる独特の味わいに、音応解所長である八尋氏の編曲の見事さもうなる。わんぱくの子守歌、原曲はソプラノだが、バリトンで歌われるとやたらと優しさより力強さが引き立つ。これで眠れる人は、もう立派な数寄者(すきもの)ならぬ不気味者(もの)だ。
 
 続いて、しばし映画「鯨神」から諸曲が続く。映画は未見ながら、どこかで聴いたことのあるフレーズが聴こえてきて、伊福部節を味わえる。

 「秦・始皇帝」「奇巌城の冒険」に続いて、後半はゴジラシリーズから諸曲が並ぶ。平和の祈りの、なんという荘厳さか。ここには、同じ平和を祈る旋律ながら、原曲に比べ深い精神性と藝術性が際立つ。千古の子守唄から、ファロ島の不気味さは筆舌に尽くし難い素晴らしさだ。伴奏のピアノも良い。巨大なる魔神から、いよいよマハラモスラで締められる。このマハラモスラの、まさに大自然の象徴のようなモスラの神々しさよ!


 続いて、豪快ファンタジーシリーズの新作、ゴジラVSメカゴジラから音応解所長の自由な選曲によるSFSF風メドレー。

 豪快ファンタジー ゴジラVSメカゴジラ (「ゴジラVSメカゴジラ」から選曲したメドレー)
 M7,2,39,26,5,8,24,18,41,1,29,34,16,12EX,40,4,43

 豪快ファンタジー 昭和メカニック (昭和メカニックライトモチーフから選曲したメドレー)
 REVENGE OF MECHAGODZILLA M5(サイボーグ少女),M7(メカゴジラ2号)
 BATTLE IN OUTER SPACE M30(戦闘ロケット製造)
 KING KONG ESCAPES M4(メカニコング)
 THE MYSTERIANS M5(モゲラ)
 ATRAGON M26(ムウ潜航艇),M21(ムウ飛行兵器)
 LATITUDE ZERO M8(黒鮫号)
 YOG: MONSTER FROM SPACE M2(ヘリオス発射)
 VARAN THE UNBELIEVABLE TV2(ロケット発射)
 MONSTER ZERO M12(X星人円盤出現)
 THE MYSTERIANS M8(ミステリアンドーム)
 GHIDORA THE THREE HEADED MONSTER M13(松本市広報車)
 DESTROY ALL MONSTERS M23(探検車メーサー攻撃)
 GODZILLA VS. GIGAN M2(ガイガン戦)
 DAGORA, THE SPACE MONSTER M14(シコルスキーH-19はつかり),M16A(蜂毒噴霧器)
 (以上男声無伴奏編)

 豪快ファンタジーシリーズとしては、「ゴジラVSキングギドラ」「ゴジラVSバトルモスラ」に続き、3枚目となる。平成メカゴジラの、あの独特の「どどどど」のオンパレード。重量感の極み。素晴らしいの一言。いつものマーチも入っているし、私が大好きな、「メカゴジラ全速飛行」が入っているのも、激烈にポイントが高い。ミレニアムシリーズの、飛行ユニットのついた機龍も恰好良いのだが、メカゴジラがあのまんま飛ぶというのが最高なわけである。

 続いて、昭和のビックリどっきりメカ特集。と、言っても特撮映画の、だ。誤解なきよう。

 それにしても、選曲のマニアックなことよ。サントラのプロフェッショナルの仕事であろう。正直言うと、私はそこまでのサントラ厨ではないので、サッパリ分からないのだが(笑) それならそれで、純粋に音楽として楽しめる。ときどき、SFSF等で知ってる曲も出てくる。「シャガー~」もあるよ。ガイガン戦の、火山の噴火感は異常()


 最後は、音楽CDではなく、PCで読むSFSFに関する音応解所長八尋氏の独自の解説(原曲等とのSFSFの違い、編曲の分析、解説)であるが、不気味社のリンク音源付きなので、どの部分を解説しているのかが分かりやすい。

 不気味社版「SF交響ファンタジー第1~3番」 2004~2023年の全テイク
 不気味社首魁の論文満載 コンピューターオンリー(非音楽CD)

 これがまた、マニアックの極みィ!!!! ちょっと、詳細すぎてちんぷんかんぷんというレベルではないのだが、それでも所長のこだわりがたっぷりと詰まっていて、読み応え1億点の、同曲に関する最高の解説であろう。

 特に、原曲(サントラナンバー)と比較した微妙な編曲の妙(音や強弱記号、オーケストレーションの変更)の詳細は、研究者も顔負けであり、むしろ八尋氏こそが同曲の随一の研究者であることがよく分かる。

 また、演奏譜とスコアの微妙な違い(写譜間違いと推察)の考察も外せない。どこの部分かは、ぜひ同盤を御購入のうえ、確認されたい。間違いなのだが、神のいたずらか、偶然か、その間違いが絶妙な効果を発揮し、伊福部の正しい編曲のように聴こえて、間違いのままの演奏が一部流布しているという。ちなみに、私の耳ではよく分からないのは御愛敬である

 不気味社の伊福部探求は、さらなる高みに達している。




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