長嶺 俊一(1949− )
当サイトのYouTubeを長年聴き続けてこられたという沖縄在住の作曲家の方より連絡があり、自作の交響曲をご紹介いただいた。
長嶺は沖縄の旋法を用いて作曲し、その旋律線はオリジナルであるとのこと。交響曲のほかにもヴァイオリンソナタ、交響詩、交響組曲などを作曲しているが、このご時世、特にオーケストラ曲はなかなか実演には恵まれず、DTMにて再現して発表している。
なお、作者のホームページはこちら OKINAWAN CLSSICAL MUSIC COMPOSER : SHUN-ICHI NAGAMINE’S WEBSITE.
交響曲の他、ヴァイオリンソナタや交響詩「宇流麻島」、沖縄組曲等の音源がある。
交響曲第1番 〜沖縄旋法による〜(2010)
全体で40分ほど。新古典的な作風だが、構成は疑古典風で、形式感はしっかりしていつつも、自由に主題が取り扱われているように感じた。また作者の解説によると、循環形式を用いているとのこと。
第1楽章、明るく楽し気な第1主題が短い導入を経て現れる。沖縄民謡に顕著な独特の旋法によるが、作者のオリジナルということで、民謡風の味わいがありつつも、民謡そのままの土臭さはあまりない。しばし溌溂とした第1主題を扱いつつ、小展開してゆく。第2主題は、2分ほどから始まる流麗な南風のようなものだろう。3分ほどから展開部。第1主題が扱われ、自在に姿を変えてゆく。第2主題も扱われて、木管なども加わり、世界が広がってゆく。やがて第1主題と合体し、展開部の頂点をなす。その後、6分くらいで再現部に入る。ティパニのリズムが加わり、躍動感を増しながら両主題がやや縮小されて順に現れ、小展開部を経てコーダへ向かう。
第2楽章は緩徐楽章となる。演奏時間はブルックナー・マーラー流儀ではなく、疑古典風に他の楽章と同等。一聴した感じは、全体にオルガン曲のような響き。大きく分けてABA'の3部形式で、A'はやや拡大されている。冒頭から清浄なる空気に満ちる。爽やかな朝焼け。涼しいうちにしばらくゆったりとした散歩を楽しみ、5分ほどで中間部に入り、打楽器も加わってテンポアップ。舞曲風となり、沖縄っぽい雰囲気を演出する。7分ほどからテンポが戻り、緩やかな響きが帰ってくる。
第3楽章は古典・浪漫派の順当であればスケルツォ楽章となるが、規模が大きく、少し様相が異なる。また発想記号はモデラート、テンポもゆったりとしており、メヌエットの性格も有しているように感じる。これも大規模なABA'の3部形式。短い序奏ののち、6/8による舞曲風のA主題がゆったりと流れ、ワルツ風の雰囲気も演出する。旋法ワルツだ。打ち寄せる波うちのように、規則的に進む。3分ほどからテンポが上がり、一気に琉球風味が増して、踊りまくる。5分ほどでまたA部が戻り、ワルツ風主題が再現される。一通り再現されたのち、短いコーダで、意外にあっけなく終結する。
第4楽章フィナーレ。明るい調子で燦燦と輝く南国の太陽のような主題により始まり、すぐに展開される(あるいは第2主題となる)。展開変奏は続き、対旋律もからむ構造にも発展する。また、第1楽章のテーマも出現する。と思う。(してなかったらすみません。)4分ほどでいったんテンポが落ち、夕暮れの音調となる。5分半ほどより経過部となり、音調はさらに薄暗くなるが、勢いは失われない。7分ほどより冒頭の主題が再現され、変奏まで続いたのち、コーダに至って祝祭的気分のまま集結する。
分かりやすい形式感を持ち、また旋律面に重きを置いたメロディーもの交響曲という印象。
作者のYouTubeはこちら 第1楽章 第2楽章 第3楽章 第4楽章
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