第12交響曲
この12番というのがクセモノでありまして、ただの宣伝音楽、11番と共に2・3番の焼き直し、映画音楽みたいな素材の交響組曲化であって交響曲ではない、楽想も内容もチンプだ、などなど批判は多々あると思います。
少なくとも、11番のほうが交響曲として立派だ、とか、11番のほうが内容的にもイイ、とか、それもあると思います。
個人的には、11番は血の日曜日事件とかを描写してちょっと暗くて、渋くて、長いので、12番のほうがまとまってていて迫力もあって、同じ革命歌でも聴きやすい旋律がたくさん出てきて、好きなだけなんです。
正直、これだけ単独で録音する様な酔狂な指揮者はあまりいないので、CDも少ないし、全集をするような気合の入った人の録音はどれも良いので、店頭にあるものを聴いてみましょう。
ムラヴィンスキー/レニングラードフィル
バルシャイ/WDR交響楽団
コンドラシンやハイティンクも、良いですよ。
ソ連にとって2度のロシア革命というのは国家国運をかけた大事件で、日本でいえばやはり明治維新や太平洋戦争そして敗戦クラスの大事業だったのでしょう。それを記念する音楽は、いろいろあるのだが、ショスタコーヴィチは2回もそれぞれを記念して交響曲を書いている。さいしょは2番そして3番だったが、かれも若かったし、けっこう斬新的な音楽で、ソ連の理想とする民衆に分かりやすくかつ芸術的価値が高いというものとは、ちょっと路線が異なっていた。それを円熟の筆をもって書き改めた……いや、創作し直したのが11番と12番であって、革命歌をふんだんに使用し、情景描写と革命精神とをまったく見事に結合させた交響楽として、どちらもすばらしい出来上がりを見せている。
ムラヴィンスキーは11番もたいへんすばらしいが、ともするとどうにも映画音楽の焼き直しみたいな12番を、非常にシリアスに、そしてシビアに、なおかつ、描写力も抜群に演奏していて、ラストの迫力も充分すぎるほどであり、これ以外をあまり私は聴く気がしない。録音状態だけ、唯一、不満な点か。いちおう2種類、聴いています。
デジタル録音ではバルシャイの全集より同曲を推薦したい。この全集は値段も安いし、網羅するのにかっこうですので、お薦めします。迫力、旋律の豊かさ、管弦楽の妙、どれも良だと思います。
ちなみに11番は、やはりムラヴィンスキーとコンドラシンにトドメを刺す。シリアスでいて、斬新であり、かつ、描写力も充分で、すばらしい。バルシャイもやはり上手だ。11や12辺りまで録音するような指揮者では、ショスタコーヴィチの何番を聴いてもハズレは無いと思われます。ハイティンクもいい。
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