チャンス(1932−1972)


 アメリカの寡作作曲家、ジョン・バーンズ・チャンス。若いときはオーケストラでティンパニ奏者として活躍し、その後、米第4、第8陸軍バンドのアレンジャーとして活躍。その後はパブリックスクールの教諭や、大学の講師も行ったが、40歳を目前にして自宅で感電死するという不幸に見舞われ、夭逝した。そのようなわけで、教諭時代の学生が演奏する前提の平易な曲が多く、またスクールバンド用の吹奏楽曲が日本でも高名。

 特に、「呪文と踊り」「朝鮮民謡の主題による変奏曲」(朝鮮戦争に関連)が代表だろう。

 そのチャンス、若いときのオーケストラ作品である交響曲第1番(1957)と、亡くなった年である最晩年(といっても30代だが)の吹奏楽と打楽器のための交響曲第2番がある。ここでは音源のある2番をとりあげる。


管楽器と打楽器のための第2交響曲(1972)

 解説によると1961年に第1交響曲として作曲されたが、1972年に2番として改作された、とある。またWikipediaによると1957年にオーケストラ作品で若書きの第1交響曲がある。これらの「1番」が、同じものなのかどうかはわからない。

 続けて演奏されるが、3つの部分に分かれているので3楽章制として良いかと思う。全体で18分ほど。

 第1楽章はスッスランド(ささやくように、つぶやくように)という発想指定。ソナタ形式。その通り、聴こえるか聴こえないかの大きさで主要主題が「ささやかれ」て、楽器が少しずつ増えてゆき、金管のファンファーレから主部エネルジーコ。アレグロとなって、雄々しい第1主題が。すぐに緊張感を持った静かな第2主題に。展開部では、それらが入り交じって展開される。ただし、じわじわ進む系で、あまりドカンとは盛り上がらないと感じる。再現部なしからコーダにいたって、サッと終結する。

 第2楽章はエレヴァート(気品をもって、気高く)となる。三部形式の緩徐楽章。ホルンとクラリネットの、重々しい主題から始まる。中間部では低音から金管も絡んできて、じっくりと響きが厚くなるが、再び冒頭へ戻る。

 アタッカで続く第3楽章はズランチョ(突進、勢い、情熱)という、全ての楽章が、ちょっとなじみのない発想記号が指定されている。やや複雑な三部形式。2部の主題とリズムの変奏に近いアレグロから、一部激しい打楽器のソロがからみ、緊張感を保ったまま盛り上がって、装飾音符の連続から、背後で主要主題が鳴らされて、1楽章のファンファーレにつながってゆく。短いそしてコーダへ行って、ここもサッと終結。
 
 平易な路線からこのようなシリアスで重厚な路線への転換期に、残念ながらチャンスは亡くなってしまった。 





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