ダウニング(1955− )
後の祭掲示板で太郎兵衛様より紹介された、吹奏楽の交響曲。曲自体は古いもので、日本でもたまに演奏されている。ネットに音源もあがっているので聴ける。しかし、作曲家本人ジョセフ・ダウニングの情報が、まっったくなくて笑ってしまった。無さすぎる。意図的に秘匿されてるのかッ、というくらいに無かった。
と、思ったら太郎兵衛様より英語の短い紹介ページをご教授いただいた。それによると、ノースウェスタン大学及びブリガムヤング大学で学び、また自身も1988-85年にノースウェスタン大学で教えていた。その後は、シラキュース大学、デポール大学で教鞭をとった。とある。
管楽器と打楽器のための交響曲(1985)
3楽章制で、演奏時間は30分近く、というところ。1楽章と2楽章が短く、3楽章が全体の半分ほどを占めている。
1楽章は「ダンシング・デイ」とある。これは発想記号ではなく、副題に近いだろう。演奏時間は6分半ほど。明確な急緩急の3形式で、前半は変拍子の軽快なリズム・ダンス。なるほど、ダンシング・デイか。軽快で明朗な主題ながらも、不協和音がけっこうエゲつない。中間部は牧歌的な旋律に、なぜか打楽器類が人を小馬鹿にしたような感じで、延々と割りこんでくる。特にクラクションはなかなかふざけている(笑) 金管もそれへ加わって、アイヴズのような実験音楽的な音響を創作している。第3部は冒頭に戻って、軽快な調子。対旋律的に面白い響きが二重に進行し、それがコーダへむけて突進してゆく。最後は、鼻をかんだようなBOO音。
2楽章は「グラフィック・ロンド」という。絵画的なロンド、というべきものか。緩徐楽章であり、これも演奏時間は6分ほど。木管と金管の、やわらかなコラール(主題A)から始まる。ロンドというくらいだから、複数の主題が入れ代わり立ち代わりになるのだろう。すぐに、舞踊めいた主題Bになる。続いて、拍子が変わって主題Cに。そしてB'
へ。B' というのは、ロンドというのは戻ってくる主題が必ず少し変奏されているからである。そして、C'
なのか、新しい主題Dなのか判別つかないが、新しい展開へ。マリンバのソロが雰囲気を出している。
そこからB'' になり、この主題の変奏曲のようにも感じられる展開となる。Cも現れて楽章はコーダへ。コーダは、Bが戻って、終わる。けっきょく、主題Aは戻ってこないので、序奏なのかも。
3楽章は「ソナタ・コラール」。きらびやかな音調の導入部から、シリアスな主題が立ち上がる。次に、ゆったりとしたコラール主題が。しかし、安らかなものではない。曲はカオス的な無頼の音響爆発も見せつつ、アレグロへ到ってゆく。ソナタ形式になっているのかどうか、ちょっと主題が複雑で分からない。普通なら、主部アレグロから第1主題だが。続く、金管のゆったりとした半音進行の主題が第2主題と考えると、なるほど、ソナタ形式っぽい。すぐに主題は微妙に展開しながら受け継がれてゆく。第1主題が戻り、展開部か。それはまたすぐ過ぎ去り、第2主題の展開へ。第2主題の展開がメインだが、第1主題も絡んでくる。なくほど、これは分かりやすいソナタ形式。展開部はたっぷりと進んで、その頂点でクラリネットのソロが雰囲気を変える。ソロはオーボエやトランペット、サックスなどに受け継がれつつ、アレグロへ。ここからは、第1主題を展開する第2展開部とでもいうべきものか。もしかしたら、展開する再現部というものかもしれないが。
そこからコーダへゆくのだが、コラール主題が戻ってきて、しっとりとした展開になる。が、すぐにアレグロ主題と入り交じって、堂々たるコーダとなり、ファンファーレ、コラール、カオス、一気に終結。カッコイイ。
1985年オストウォルド賞受賞。
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