ニールセン(1865−1931)
デンマークの作家ニールセンは他にも同性の方がいるようで、こちらはカール・ニールセン。ニールセン仲間(?)ではもっとも高名かと思われる。
交響曲は6曲あって、副題付が多い。2番「4つの気質」と4番「不滅」が有名どころでしょう。あと3番「広がり」6番「素朴」だそうです。意訳なので、「滅ぼしえざるもの」とか「シンプル」とか、他にも呼び方はあるみたいですが。
6曲ともまったく悪くないが、頂点は4・5番だろうなあ。
2番なんてまあまあ日本でも演奏されるようだが、叙情的なだけで気質表記もよく分からない。1・3番は佳品。6番はシンプルというがぜんぜんシンプルではなく、けっこう晦渋。シンプルなように見せかけた邪悪な作品。それらと(好き好きですが)4・5番との落差が、ちょっと私は激しい作家だと思っています。
第4交響曲「不滅〜滅ぼし得ざるもの」(1916)
ここでいう「不滅」は解説によると、ただ単に不滅なのではなく、能動的な意味での 「消しがたいもの」 「滅ぼせないもの」 という意味合いがあるという。もちろん、標題音楽でも無い。
第1次大戦と同時に作曲されたこの交響曲は、ニールセンのこれまでの3曲とは一線を画し、形式も内容も遙かに飛躍して、名曲の仲間入りを果たしている。戦争が起ころうとも、命は不変、不滅。けして滅ぼすことなどできない。それは、音楽も同じである……ニールセンの決意は、ここに輝かしく表明される。
切れ目なく演奏される1楽章制だが、4つの部分に分かれて、4楽章制にもなっている。
1楽章部分はアレグロで、管楽器のパッセージが堂々と主題を呈示する。短くも印象的なアレグレットを経て、思いアダージョへ到る。管楽器が中休みし、弦楽の緊張感ある調べも趣深い。最後のほうは豪快に鳴り響く様が、感動的であるが、この交響曲の白眉はなんといっても4楽章部分。
4楽章アレグロでは全楽器の咆哮する様が見事だが、やはり注目は、北の海の波濤を表現しているのか、2台のティンパニの大怒濤のトレモロと金管とのアンサンブル。荒波が押し寄せては岩にぶつかるような迫力。
燃える漢のティンパニ〜〜〜!
ラストのコラールもそうだが、日の出のような放射的な解放感は他の彼のシンフォニーではなかなか得られない物で、人間の人間性に対する不滅の想いというものを現した、とても素晴らしい人間讃歌であろう。
何種類かCDを持っている価値はあるでしょう。
第5交響曲(1922)
副題もなく、不滅より地味だしハデでもないけれど、中身というか精神性はこちらが高い。2楽章制だが、やはりいくつかの部分に分かれている。
妙に不安げな旋律がワヤワヤ蠢く第1部。突然、打楽器部隊が動きだし、不安はいや増す。旋律はアラブっぽくもあり、行進曲調で、こいつは面白い音楽だ。
そのまま、アタッカで続くアダージョではスネアドラムの妙技に聴き入る。そして、ついに開放される音楽。第1部は導入部であった。
この解放感こそニールセンなのではないか。
同じ主題が延々と各楽器に受け渡されて続き、消え入って終わると、第2楽章。雰囲気が一転して、プレストでよく動く早い音楽が続き、アンダンテ ウン ポコ トランキーロを挟んでまたアレグロとなる。
あとは大きく広がって、なんとも集結しないで終わってしまう。
けっこう不思議な音楽。でも、面白い。(副題をつけるとしたら、不気味?)
かのマーラー第10交響曲クック版を作ったイギリスの音楽学者デリック・クックが、「20世紀でも最高の交響曲」 と評したとか。
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