サン=サーンス(1835−1921)
 

 交響詩「死の舞踏」組曲「動物の謝肉祭」等でも知られるサン=サーンスは、交響曲を番号なしの習作で2つ、番号付きで3つ造っているとの事だが、今日、よくコンサートにものぼる傑作中なの傑作といえば、やはり3番「オルガン付」になると思われる。


第3交響曲「オルガン付」(1886)

 かつて、高級カレーのCMで第2部冒頭が仰々しく流れていたのを懐かしく思われる方もおられるだろうが、確かにカッコイイ(笑) 渋いのが好きな人からはデーハーだと敬遠されがちだが、デーハー好きの私としては、こういう曲は、やはりグッとくる。頻繁に聴くものではないかもしれないが。

 フランクが提唱したとされる「循環形式」により、分かりやすい旋律が全楽章を通じて現れて、全曲を通してたいへん明解な構成をもっている。

 2部制だが、部がそれぞれ明確に、さらに2つの部分に別れているので、4楽章制と同じ。演奏はアタッカで進められる。

 第1部、神霊的、深遠なアダージョから曲は始まる。2分もしないうちに、絃楽のざわめきによる第1主題。このテーマは特徴的で、何回も現れ、循環する。木管に引き継がれ、穏やかに展開して行く。拍を伸ばし、のびやかで優雅な第2主題。展開部は緊張感が現れ、金管も警告のように響く。雄々しく第1主題が循環、再現。ホルンとトランペットの対位法的な雄叫び。ティンパニもここは荒々しい。第2主題が現れ、緩徐楽章に相当する第1部後半へ。

 アタッカで、オルガンが厳かに鳴り響き、第1部後半部、緩徐楽章相当部へ。オルガンのトーンへ乗って、絃楽器が切々とテーマを奏でる。そのテーマを楽器を変えて展開(変奏)してゆくも、雰囲気が変わり、中間部ではピチカート奏法で循環主題がおどろおどろしく出現。緊張感が増して行く。しかしそれを払拭するのは、オルガンと絃楽器の平和と愛に満ちたテーマである。

 第2部はスケルツォに相当する。アレグロで雄々しく、英雄的に循環主題で始まる。続いて、ピアノが活躍する部分。これは、そうなればトリオになるのだろうか。2台ピアノにオルガンと、ソロではあるがあくまで鍵盤楽器もオーケストラの一員として活躍するのも、この交響曲の特徴だ。トライアングルも、愛らしいアクセントとなっている。第1主題に戻り、ピアノの部分も繰り返される。そこから、静謐なアダージョであるが、こっそりとアレグロのテーマも差し込まれるのが、さすがに芸が細かい。

 第2部後半部は、堂々たるオルガン大活躍、重厚、豪快なマエストーソとなる。云うまでもなく、終楽章フィナーレに相当する。英雄的なテーマ。絢爛豪華なオルガンの荘厳な雰囲気と調子。絃楽フーガも登場し、嫌がうえにも盛り上がる。オルガン乱れ弾きから第2主題へ。これまでの主題が狂喜乱舞で全員登場。サンサーンスの熟練の作曲技巧により、なんの矛盾も無く全てが調和的に扱われ、大団円の奇跡的な効果を上げる。

 エンターテイメント交響曲として申し分なしの盛り上がりと効果。

 単純だとかチンプだとか云う前に、この効果こそを評価するべきに思う。
 
 こういった音楽を通俗だと非難する向きというのは、納得ゆかない。そういう人たちはゴタイソーなモーツァルトやベートーヴェンのみをご拝聴して、そのような事を云っているのかどうか。モーツァルトなんか通俗を通り越して変態だろう。

 このオルガンと金管による平和と繁栄を謳歌するような輝かしい響きというのもは、音楽を聴く喜びを素直に体験させてくれるではないか。




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