カリーンニコフ(1866−1901)


 この聞き慣れぬ名をはじめて知ったのは、数年前、アマオケでいきなり演奏することになってよりだった。なにやら、いま全国のアマオケで流行っていて、スヴェトラーノフがN響で演奏したのがはじまりらしい。(とかなんとか云われた記憶がある。)

 寡作家で、貧困の内に30代で死んでしまった人というのは、こうも幸せに憧れ、メランコリックにあふれる音楽を創るものなのだろうか。他の劇音楽とかもあるが、ちょっとイマイチな印象だったが……。

 シンフォニーは2曲ある。          


第1交響曲(1895)

 名曲だなあ。素直にそう思う。1楽章冒頭から哀切に満ちた主題といい、見事な展開といい、金管がよく鳴るオーケストレーションといい、まさにまさに、ロシア流の面目躍如たる交響曲ではないか。
 
 2楽章の様子はまるで寒空よりふりしきる雪の情景そのものだ。こういう情緒は北海道人は強いぞ。実体験だから。なんともいえぬシンパシィだ。それにしてもきれいな音楽だなあ。無音の晩にシンシンと雪の降る音だけが鳴る様というものを、みなさんは想像できますか。

 3楽章のスケルツォがまた一転して異国情緒あふれた佳品。当時のいい方でいえば、トルコ風というかアラビア風というか。明るい雰囲気のスケルツォと静かで内気なトリオとの対比も上手だと思う。悠々たる旋律美がそこかしこに見られて、聴いて飽きない。

 4楽章はロシアの短い夏の太陽か。1楽章の題1主題が再現されるとそこから発生した新旋律が荒れ狂う。喜び祭典であり、まことに交響曲の基本を忠実に守っている。しかしこれは典型的なものであるのだがけしてマンネリではない。それはやはり旋律美という武器を最大限に利用しているからで、しかもその旋律はすばらしくロシア流。ロシアン・シンフォニーの強みはそこにある。トライアングルがまた、いい味だしているのです。その澄んだ音色、聴いて下さい。
 
 2番も悪くないですが、1番ほどの魅力や新鮮さは正直、ないです。力つきたのか。(享年34)


 CDは多くはないが、新盤で入手し易いのはあります。しかしやはり入手できるのならばメロディア盤のスヴェトラーノフとコンドラーシンが素晴らしい。個人的にはテンポが颯爽としつつもロシアの詩情もたっぷりのコンドラーシンが良い。
 


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