ポッター(1918−1980)


 かのハリー・ポッターのお父さんとまったく同じ名を持つ作曲家がいた。日本スリザリン生としてはびっくりである。アーチバルド・ジェームズ・ポッターという。
 
 作曲家としてマグル生活を送りつつ魔法使いとして活躍したかどうかは残念ながら知らないが、「フィネガンズ・ウェイク」や「ゲール風幻想曲第1番」とか、興味深い作品と共に、作品集には交響曲があったので紹介する。ちなみに、ポッターはロイヤルカレッジにおいて、RVWに師事しているとのこと。


交響曲「深遠」(1968)

 この曲はポッターの中でも最もシリアスなもののようで、5楽章制。ただし、曲は全体で30分ほど。各楽章にはテンポ記号として 1楽章モデラート 2楽章レント:ワルツのテンポで 3楽章アダージョ 4楽章ヴィバーチェ 5楽章エピローグ となっているが、事実上楽章表記は無く、全体として1楽章制なのかもしれない。
 
 イギリスの近代交響曲というと、けっこう暗めのものが多くて、多分に幻想的。これも、冒頭は曇り空に霧のたちこめる北英の印象がある。金管のパッセージで盛り上がって、ワルツへ。
 
 ワルツは、さすがラヴェルに師事したRVWに師事したというか、めちゃくちゃ「ラ・ヴァルス」っぽい(笑) 交響曲に入れてしまうのがアイデアか。

 次のアダージョが美しい。無調っぽい響きも織りまぜつつ、旋律は哀愁がただよい、現代の悲しさか。なによりオーケストレーションがうまい。その辺はRVWの教えのたまものだろう。
 
 ヴィバーチェではコミカルなファンファーレで幕を開け、ポッターのポピュラリズム全開の音楽になっている。ふだんは、そういうポピュラー畑で仕事をしていたのだろうか? 板についている。無窮動的な伴奏で、コミカル旋律が平行に進行するのが、現代っぽいといえばそうかも。
 
 最後に、また冒頭が回帰しつつ、不協和音なんかで少しヒネクレつつ、深遠な(!)コラールの間にファンファーレも再現され、打楽器も激しく、祝祭気分のように、ドーンと盛り上がって終わります。

 どこかの東洋の島国とは違い、1960年代といえども、ゲンダイオンガクなどという暴風はどこ吹く風。大陸で気を吐くシュトックハウゼンとかブーレーズとかノーノとかをあざ笑っているかのような、とても美しいシーンの聴かれる交響曲になっている。独自性って、こういうことだと思った。特別に面白いかと云われれば、まあ、マニアック好みかな、というのが本音だけれども。

 ちなみにCDはそのマニア御用達マルコポーロ。


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