プリエト(1896-1982)


 スペインの北部にあるアストゥリアス自治州(公国)出身の女流作曲家で、名はマリア・テレサという。スペイン内戦によりメキシコへ移り、そこで没した。スペインやメキシコの牧歌的な風景を切り取った素朴で温厚的な作風で、チャベスやポンセ、ストラヴィンスキーに賞賛されたという。

 オーケストラ作品もあり、特に交響曲は3曲もある。マニアックで典型的な第3国クラッシックだが、そういうのにこそ、本流ではけして味わえぬ郷土の旨みがある。

 プリエトは民族派ではあるが作風は形式的で、かつかなり古典的であり、活躍年代を見ても新古典主義作家と言って良いだろう。晩年には無調から12音に到ったが、それも響き自体は調性っぽい。 

 交響曲は3曲とも新古典的で、鄙びており温かみがあって、清々しくいかにも品の良い女性的な印象を与える。


第1交響曲「アストゥリアーナ交響曲」(1942)

 アストゥリアスはスペイン北部の1県1州の自治州で、8世紀にイベリア半島がイスラム化したときもその険しい地形のせいか最後までキリスト教勢力の牙城として残り、アストゥリアス王国(後にレオン王国等)としてレコンキスタ発祥の地となり、現在でもスペイン王太子の称号として「アストゥリアス公」が残る特別な地位にある土地である。

 アストゥリアス出身のプリエトがこの地名を冠した交響曲を作ってもなんの不思議も無い。

 3楽章制で30分ほどの音楽。1楽章はアダージョから始まり、全体に序奏的性格がある。アレグロとなると、民謡調の主題が魅力的に輝く。展開は不協和音(っぽい?)トコもあって、現代的であり、そこらへんが新古典主義なところか。展開部になっても、第1主題が執拗にオスティナートされじわじわと変形されて行くのがちょっと不気味。

 アンダンテの2楽章はまたも民謡(ただし、悲歌のような)の旋律がなんとも味わい深く、途中に山岳太鼓のようなパーカッションのエコーがするあたりも程よく鄙びている。

 3楽章は伝統的にアレグロ・モッソ。民族舞曲風。また技法としてはオーソドックスに古典的。2つの主題が登場するが、スケルツォとトリオのようにも聴こえる。従ってスケルツォ楽章を兼ねているのではないか。3部形式で、第1主題に戻って、最後は1楽章の主題も登場し、全体を統一させている。コーダは映画音楽みたい(笑)

 全体として、民族派というほどでもなく、民族・国民楽派風の新古典主義と思われる。温厚な作風が、万人向けな聴感を演出しているが、やはりちとマニアックか。


第2交響曲「短い交響曲」(1945)

 そのまんま(笑)

 これも3楽章で15分ほどであり、短いっちゃ短いが、小交響曲といったところ。だが中身はしっかりと詰まっている。

 アレグロ・モデラートでさわやか、かつ上品に立ち上がる。歌謡ふうの旋律は見事で、鼻唄でも出てきそう。この人は展開が弱いが旋律自体に魅力がある。そのへんは民族派と云えるだろうが、形式はかなり古典的なのが面白い。1回聴くと物足りないかもしれないが、聴けば聴くほど味が出てくる上級向けの音楽だと思う。

 アンダンテ・エスプレッシーヴォの2楽章へ移り、祈りが捧げられる。激しく盛り上がり、祈りは切々と歌い上げられる。短いだけで、中身は濃い。

 そのまま、序奏付きのアレグロとなる。美しい旋律が聴く者へ安らぎを与える。アレグロといっても、テンポはアンダンテほどであり、アレグロだからってマーチみたいにやるとは限らない良い教材だろう。物事は単純には進まない。まして万人に向けられる音楽が、そして交響曲が、単純なはずがない。

 清らかに歌いあげられて終わる。


第3交響曲「ダンサ・プリマのための交響曲」(1951)

 由来が分からないが、これも3楽章制。プリエトの交響曲は全て3楽章制である。こちらは2番よりやや長く20分ほど。

 1楽章は「ラ・ダンサ・プリマ」で、悲しげな歌謡的主題から立ち上がる。それはフガートとなりタンバリンもどこか鬱として悲しげに響く。一転、第2主題が明るく鳴る。バレー音楽のようなリズムある音楽が魅力だ。構成が固く、最後まで荘厳な雰囲気を保っている。

 2楽章は完全に舞曲風のスケルツォで、メヌエットといっても過言ではない。(メヌエットではなく、あくまで指示はスケルツォだが。) 短いトリオを挟んで伝統的に終結する。

 3楽章のアレグロは深刻な調子で、ショスタコにもちょっと似る。やはり舞曲風で、ダンサーのための交響曲というくらいだからやはり踊りと関係があるのだろう。もしかしたらバレー作品かもしれない。中間部ではサックスが登場し、ジャジーでアンニュイな雰囲気をよく出している。組曲のように次から次へと楽想が入れ代わり、飽きさせない。最後は不協和音も登場し、一気呵成に終結。








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