グレグソン(1945− )
表記では、グレッグソンとも、グレッグスンともある、イギリスの現代作曲家、エドワード・グレグソン。オーケストラ、室内楽、吹奏楽と合わせ、イギリスらしく金管バンドの曲も多い。
金管バンドは、金管楽器(と打楽器)だけのバンドで、本来の意味の「ブラスバンド」となる。ブラスとは真鍮のことで、真鍮製の金管楽器を意味する。もともと、欧州では軍楽隊バンドということでこの金管バンドが主流だった。
その金管バンドに木管楽器を加えた編成というのが、欧州よりもむしろアメリカや日本で主流な、いわゆるウィンドアンサンブルあるいはウィンドオーケストラというもので、本来は異なるものだが、学校の部活などでは、そちらがむしろブラスバンドとして通っているだろう。日本の学校部活で、金管バンドというものはおそらく無いか、ほとんど無いと思われる。
さて、欧州の中でもイギリスは金管バンドの活動が盛んであるそうで、イギリスの作曲家はよく金管バンド曲を書いている。金管バンド用に書いて、それをウィンドオケに編曲するパターンもある。なお、イギリスではウィンドオーケストラ形態のことをウィンドバンドといって、金管バンドをブラスバンドというそうである。
金管バンドといっても、サクソルン属やサキソホーン類が入るとか入らないとかで国や地方によって編成楽器に差異がある。
というわけで、吹奏楽では「剣と王冠」が高名なグレグソンは、金管バンドのための交響曲がある。ちなみにWikipediaによると、オーケストラ作品は協奏曲が多い。
当サイト掲示板において、白樺さんより紹介を受けたものである。
2楽章の交響曲(2012)
金管バンドのための交響曲。その通り2楽章制で、20分ほどの曲となっている。2012年に60周年を迎えることなったナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・グレート・ブリトン
(イギリス・ユース・ブラスバンド)と、30周年を迎えることになったナショナル・ユース・ブラスバンド・オブ・ウェールズ(ウェールズ・ユース・ブ
ラスバンド)の共同委嘱作、とのことである。
1楽章がソナタ形式、2楽章が変奏曲という形式であるベートーヴェンの第32ピアノソナタ、またプロコーフィエフの第2交響曲に習って、2楽章制のソナタ(交響曲はもともとオーケストラのためのソナタ)として作曲された。
1楽章はトッカータは、ソナタ形式のアレグロ、短い楽章で5分ほど。衝撃的な導入より、息の短い第1主題が辛辣に奏でられ、続いてゆったりとしたバラード調の第2主題が現れる。展開部は冒頭に戻って、第1主題が主に扱われて、曲調を変えつつ展開してゆく。激しく進みながら盛り上がって、短い打楽器ソロから次第に納まってゆき、第2主題が現れてほんの少し展開される。そこから静かにコーダへ向かって、唐突に終了する。
2楽章ヴァリエーションは15分ほど。主題と4つの部分に分かれる変奏曲。アンダンテのゆっくりとした瞑想的な部分より始まって、やわらかい包み込むような和音の金管の音色が、独特の金管バンドの魅力だ。その主題を、変奏してゆく。第1変奏はアレグロ。1楽章を彷彿とさせる鋭いもの。激しい打楽器の導入より、さらに緊迫してアレグロが続く。ここが第2変奏だと思う。ドラの一撃よりテンポが落ち、ソロイスティックでおおらかなアンダンテとなるのが第3変奏。金管だけの音色による、燦然とした輝かしい音色がまた良い。さてまた激しい突き刺さる主題からアレグロとなって、第4変奏となる。第1変奏に雰囲気が似ているが、明らかに主題が異なり、ちょっとジャジーなリズムも混じる。そのまま明るく盛り上がって、小粋にサッと終わる。
剣と王冠は構成に甘さがあって、なんとなく散漫な音調が実はあまり好きではないのだが、これは引き締まっていてよい。
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