バーバー(1910−1981)
メディアの復讐の踊りを聴いてすっかりハマったバーバーだが、そういうハデで面白い曲と恐るべき地味さで保守的な曲とが混在する人だった。交響曲とか協奏曲とか純粋音楽といわれる分野で、保守度が高い。弦楽のためのアダージョは、特に傑出した出来だと思う。
さてシンフォニーであるが、2曲ある。
第1交響曲(1936/1943)
20分間ほどの軽交響曲であり、単一楽章ではあるが、アレグロ・マ・ノントロッポ〜アレグロ・モルト〜アンダンテ・トランキーロ〜コン・モート(パッサカリア)と別れていて、古典的な4楽章構成に等しい。もちろん調性音楽であり、ジャズだとかの影響は一切なしの、こちらも恐るべき保守ぶり。
ネオ・ロマン主義を標榜してあるのだそうな。
弦アダやメディア、さらにはエッセイの2番あたりに特徴的な、もの悲しいノスタルジックなハーモニーや緊張感のある展開が満開の力作で、こちらは聴いていて厭きません。胸をうちます。
推奨。
2番はなんかの標題音楽で(すでに手放してしまったのだが)プロペラの回る音とか入った、なかなかのキワモノだった。飛行機の関係の、映画だったかなんだかの、音楽だったなあ。大戦当時のアレだったかなあ。
心のそこからつまらなかったのを覚えています。(いま聴けば意外と面白いかも)
2番について ↑ のようにずーっと10年以上思っていたが、ふと録音をみつけたので、買い直して聴いてみました。
第2交響曲(1944/1947)
つたない英語力を総動員して輸入盤の解説を読んでみたが、飛行機というのはあたっていて、第2次大戦中に米空軍のために書かれた交響曲であり、その意味では機械描写のモダンタイプ音楽ということになる。ところが、ネオ・ロマンティシィズムを標榜するバーバーのこと。日本的プロコフィエフのような大澤壽人の神風協奏曲(この神風はけして特攻隊ではない)に比すると、まったくロマン主義。たまに打楽器が飛行機のエンジン音(か、もしくは機銃か)を模したりするが、全体的に、ふつうの交響曲でした。
3楽章制で、バーバーらしくたいへんに堅実な、古典的な手法と現代的な感覚(手法ではない)が見事に結びついていて、初期の小規模な音楽である1番よりも、いざ聴き直してみたならば、出来としては良いと思えた。人間の耳などあてにならん。
全体で30分ほどで、1楽章のアレグロ マノントロッポが最も充実している。ピーポーというような、信号音を模した響きでスタートする。飛行場へ並ぶムスタング戦闘機でも彷彿とさせる序奏より、いよいよ軍団が発進する。
しばし颯爽とした重アレグロが続くが、第2主題は優雅な高度飛行のような旋律。どこまでも青い空。白い雲。しかしそこへ敵機接近!(どうせゼロ戦だろう)
敵機とは接近遭遇比しなかったようで、無事偵察飛行から帰って来て、基地でくつろぐ雰囲気か。翌日は、だが、ついに戦闘となる! 息つまるドッグファイト。機動性ではゼロには勝てない。大パワーで押し倒すのだ!
戦闘が終わり、音楽の様子では、負けたらしい。よく分からないけど(笑)
2楽章はアンダンテとなっている。木管の悲しげな旋律が、まるで戦争反対音楽のようではないか。
3楽章はプレスト。飛行機というよりかは、空軍全体をあらわすような堂々としたオーケストラの疾走が聴こえる。しかしどこかほの暗い響きは、バーバーの戦争に対する苦悩が見えるようだ。
私の記憶ちがいか、それとも今回の録音では省かれたのか、特にプロペラの音は入ってなかった。
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