三枝成彰(1942− )
現在ではZガンダム、ZZガンダム、ガンダム逆襲のシャアのサントラで高名な作曲家の三枝は、東京藝術大学及び同大学院を卒業し、若いころはバリバリの12音無調の前衛作曲家であった。本名は読みを同じくして成章だが、姓名判断で画数の良いと言われた成彰をペンネームとしている。
藝大入学前は入野義朗に師事し、藝大の1年後輩に池辺晋一郎がいる。80年代、40代からはタレントとしてテレビでも活躍した。
純音楽の作品も多いが、サントラやCMの作曲も多い。前衛作品があまりに聴衆に理解されないため、見限った後は調性の権化と化したのも特筆できる。調性によるオペラ、合唱曲も多い。
本人の公式サイトの作品表によると、交響曲が2曲ある。そのうちの1曲は、YouTubeに演奏が上がってるので参考にした。
交響曲「動乱」(1979)
1980年1月5日公開の大作映画「動乱」のサントラを再構成した交響曲で、交響曲のジャンルとしては「映画音楽もの」といえるだろう。本人のインタビューによると、なんのことはない、映画の音楽プロデューサー多賀英典の依頼によるのだという。
3楽章制で、演奏時間は約40分という大曲である。そもそも映画が2部構成の大作で、515事件から226事件までを描いた、高倉健と吉永小百合がダブル主演という豪華なもの。主要主題もピアノとチェロのドッペルコンチェルトであり、ピアノを高倉健、チェロを吉永小百合としたという。
第1楽章冒頭からティンパニ7台乱れ打ちで、金管群による後のガンダムのサントラにも通じるかっこいい主題が登場。弦が支え、ピアノが堂々とからむ。それが緊迫感あふれる様子で展開をはじめる。ピアノに続き、チェロも独奏で登場。ピアノも活躍して二重協奏曲風となり、冒頭主題が再現される。第2主題はピアノで華麗に始まる。愛のテーマ。だと思う。映画を観てないので知らないけど。それをチェロが受けて、展開開始。このテーマも、後にZガンダムに応用されている。たっぷりと主題が展開し、非常にロマンティックに盛り上がる。
主題小展開を終えて、本格的に展開部へ突入。第2主題をメインに展開してゆく。ピアノが延々と鳴り響き、チェロが滔々とからむ。ピアノを縦に、チェロを横に動かせている。たっぷりと盛り上がってから、静かなピアノのソロ。そしてチェロとの愛の二重奏。オーケストラが入ってきて、緊張感を高めつつ、しばしゆったりとした展開を聴かせて行く。ピアノとチェロは終始メロディーラインを牽引し、まさにドッペルコンチェルトである。構成力が流石で、旋律も甘いのだが甘ったるくない。そこは、実力だろう。
盛り上がりが頂点に達し、流れるように、突如として冒頭が再現される。第1主題及びその小展開のみ再現して、第2主題のメインとしたコーダへ。堂々と終結。この楽章だけでも、独立した管弦楽曲として楽しめる。
第2楽章は緩徐楽章。ピアノの、ポロポロとした無窮道的動機に乗って、オーボエや弦が哀愁漂うテーマを奏でる。それからチェロがそれを引き継ぎ、やがて弦楽等もそのテーマを受けて、たっぷりと情感を高めて行く。ここは映画の、純愛シーンが目に浮かぶようだ。観てないので知らないけど。全体にそのメロディーラインを自由に展開して行く形式で、チェロのソロが際立つほか、木管も哀愁ある旋律を独自に紡ぎ続ける。大きく何度か盛り上がりの波を作りつつ、静かに終結する。
第3楽章、再び戦闘シーンのような緊迫感。弦の甲高い響きに金管や打楽器が鋭く突き刺さり、ティンパニ乱れ打ちとピアノの乱打が殴りこむ。弦も上に下に、まるでリヒャルト・シュトラウスだ。それからマーチ調となって、進軍が始まる。ここまでがリピートされ、後のガンダムの戦闘シーンに通じる展開が続く。そして第2主題はオーボエで始まり、チェロの愛のテーマ(仮称)がしっとりと再現される。そこから第1主題がまた(少し短く)繰り返されて、第2の愛のテーマはピアノソロで演奏される。経過部を経てチェロが再び登場し、オーボエがサポート。緊迫感が増して行き、愛のテーマがオーケストラで壮大に鳴り渡る。短いコーダへ突入し、堂々の大団円である。
YouTubeに初演の演奏が上がってる。第1楽章 第2楽章 第3楽章 興味のある方は、ぜひ参考にしていただきたい。
また作品表によると 1983年に THE SYMPHONY という曲がある。
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