フサ(1921−2016)


 カレル・フサという作曲家がいまして、いわゆる現代音楽の作家ですが、日本では異様にメジャーな地位にあります。吹奏楽の作家として。2016年12月15日に亡くなりました。
 
 チェコの作曲家だったが、共産党政権に反発して、クーベリックやノイマンと同じく、国外へ。そこで1968年のいわゆるプラハの春事件が起き、彼は怒りと嘆きをこめて「プラハのための音楽 1968」という名曲を書く。これがまた鋭い音楽で、かのジョージ・セルの依頼でオーケストラ版も作られた。いわゆるゲンダイオンガクですが、個人的にはそう聴きづらい物ではない。スメタナの「わが祖国」と同じくフス教徒の歌が引用されていますし。4楽章制で、交響曲のようにも聞こえるし、3楽章イントロダクションはゲンダイっぽく打楽器アンサンブル。(それがまたイカス。)
 
 これが、コンクールとかで、日本でいまでも根強い人気を保持しているのですね。
 
 そんなわけで、わたしもその「1968」から入り、CDは少ないんですが、作品集に、なんと、交響曲が併録されていたのですね〜。(マルコポーロ・レーベルの、オーケストラ版1968が録音されているものです。)


反映(第2交響曲)(1983)

 パリでオネゲルやブーランジェに作曲を学んだフサは、後にアメリカへ渡る。現代書法を駆使するが、基本的に「音楽」を書く。

 当曲は2番なので、とうぜん1番もある。録音はあったようだが、廃盤のようだ。3番は無いとの事である。

 3楽章制で、20分ほどの短いものだが、形式的には、これはゲンダイオンガクの部類に入り、作曲は1982−1983年。けっこうボリュームあり。
 
 1楽章 Moderate(中程度の速さで) 2楽章 Very fast(とても速く) 3楽章 Slow(遅く) となっており、1楽章以外の指示が英語というのが、ちょっと変わっている。

 もの悲しいオーボエの無調的で超絶技巧なテーマよりはじまる今曲は、ゲンダイオンガクとはいえ、ただの騒音だけに納まらない予感を感じさせる。背景の高弦による都会的な不協和音サウンドや、ハリウッド的な効果のあるハープのグリッサンドがまた、アメリカっぽくて良い。打楽器(主にティンパニ。)も大胆に登場しつつ、音楽は盛り上がり、この時代の作家にありがちな「不安アダージョ」として帰結する。無調ではあるだろうが、かなり聴きやすい。

 2楽章は緊張感のある打楽器アンサンブルよりスタートする。打楽器は一貫して楽章を支配する。この作家は打楽器の扱いがけっこう上手い。個人的には、ただ偶発性に任せて、あるいは偶発性により計算されているといいつつ聴いてる方にはただの滅多打ちにしか聴こえぬ打音の曲よりも、こういう、ちゃんと「音楽している」打楽器群のほうが好きです。鍵盤楽器を無理に使わずともね。

 スケルツォに相当しているようだ。

 ピチカートや無窮動的な無限旋律的な進行音楽が非常に幻想的な響きを造り上げている。「1968」にも現れていたオスティナート技法がまた心地よい。
    
 3楽章もアダージョ楽章だが、こちらもゲンダイ作家がよく造る「不安アダージョ」ならぬ「世紀末アダージョ」で、まあこの荒涼感たるや、原爆後の惨状に通じるもの。

 「ヒロシマ〜〜〜」とかいう呪怨の言葉みたいな曲よりは、まだ聴けるが。

 こういう雰囲気の原典は「春の祭典」の第2部冒頭から来ていると思う。効果的なビブラフォーンが、カッコいい。気がつかぬうちに「死ぬように」終わる。
 
 したがって緩−急−緩の構成になっている。

 解説が英語で、無学な私にはあまり理解できないのですか、何を「反映」しているのでしょうね?




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