ダンディ(1851−1931)
 

 フランクの高弟であったダンディ。あんまりなじみのない作家ではあるが、シンフォニーでは「フランスの山人の歌による交響曲」が高名。交響曲では、他に「イタリア」交響曲(1番)、第2番、第3番交響曲がある。山人以外はパッとしないが、最近はオーケストラ作品全集の企画もあり、注目されてきている。機会があればこの項も追加してゆきたい。


フランスの山人の歌による交響曲(セヴェンヌ交響曲)(1886)

 山人という単語から、私はハチャトゥリアンの山人の踊りみたいなズンドコドットという音楽を想像していて、聴いてその優雅な響きにビックリした(笑) フランスのセヴェンヌ地方の民謡を元にして作られた、ピアノ独奏と管絃楽のための、一種の協奏交響曲。3楽章制、循環形式、優雅で優美な響きと、さすがフランクの弟子。また、元来作曲の動機がピアノとオーケストラのための幻想曲だったということより、音楽も実にファンタジックなもの。別名はピアノ独奏とオーケストラのためのセヴェンヌ交響曲という。ナンバーは無いが、順番でいえば、イタリア交響曲に続いて2曲目。

 セヴェンヌ地方とは、フランス南部のセヴェンヌ山脈一帯のことで、パリから見れば、これを超えれば地中海という辺である。

 ピアノは、交響曲に付随するもので、けして協奏曲ではない。ピアノ独奏入の交響曲では、(たとえば伊福部昭のような)協奏風という正式なタイトルがある交響曲以外は、たいていはそういうものになる。

 1楽章冒頭から、長閑で素朴な山人の歌主題がイングリッシュホルンにより提示される。それがフルートとホルン等に移って行く。第1主題であり循環主題でもある。既にピアノが活躍し、オーケストラ全体で堂々と鳴り渡ったのち、ピアノによる第2主題。ここらが、宮川賢治の星めぐりの歌に似ているためか、冨田勲がイーハトーヴ交響曲にて当曲を大胆に引用している。

 展開部ではピアノも旋律に伴奏にと無尽に活躍するも、けしてでしゃばらない。オーケストラは清涼感にあふれ、それがついに歓喜の爆発! すぐに循環主題が戻ってきて、夕暮れの中に曲は消えて行く。

 2楽章ではいよいよこの叙情が際立つ。ピアノ独奏がなんとも切ない感情を歌い、オーケストラは伴奏する。ここでも、イーハトーヴ交響曲への引用主題の原点が聴かれる。というか、ミクの声にしか聴こえない(笑) それは置いておいて……。音楽は幾度か盛り上がりを見せ、山人の歌とその変奏を存分に聴かせる。

 3楽章でもピアノは大活躍。民謡主題が歓喜に震える。これまでの主題が循環形式で現れては楽しく変奏・展開されて行く。ノリノリのウキウキだが、民族調の部分もありつつ、西洋音楽の流儀で堂々の終結部を迎える。最後は協奏曲っぽい。

 優雅で古典的という、フランス音楽の一派を成しているフランク流の正統な後継音楽というところ。シンフォニーを聴く場合、そっちのほうが交響曲という音楽に合っているのかもしれない。ドビュッシー・ラヴェル流はけっきょく1曲も交響曲はないし……。

 どうでもいいが冨田勲は引用というよりもはやパクリというレベル。





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