外山雄三(1931− )


 外山雄三というと、まず指揮者であり、作曲では「管弦楽(吹奏楽)のためのラプソディー」であり、見た目の雰囲気がいかりや長介に似ているということであろう。
 
 元来彼はしかし東京音楽学校(現芸大)の作曲科を卒業しており、作曲家なのである。それが、岩城といっしょにN響の指揮研究員となって、指揮者になった。
 
 今ページは交響曲の紹介であるからして、とうぜん、外山も交響曲ということになる。だが外山はラプソディーがあまりに高名で、交響曲といってもまったくメジャーではないのが現実だが、歌曲や協奏曲、管弦楽曲と並んで、彼の交響曲は存外多い。(下記参照。)
 
 CD録音してあるのは、私の知るかぎり、1番と2番しかない。


交響曲「帰国」(1965)

 ナンバーは無いが、事実上の交響曲第1番だそうです。

 しかしこの不可解なタイトルがまず眼をひく。「帰国」って……?

 帰国は帰国なのだが、交響曲としてのタイトルが不思議だと思う。1965年の作曲であるから外山34歳の力作。
 
 外山は出世作のラプソディーが、いわゆる民謡メドレー的なものであり、それ以降の作品はとにかく民謡のもつ土俗的かつ民族的かつ歌謡的なパワーをひたすら信じて突き進んできている。民謡といっても、ときに、民謡ふうな息の長い旋律を意味することもある。

 私はときどき、「日本人の作曲家は民謡とか使ってあって嫌いだ」 という意見を聴くことがあって、我の耳を疑うのであるが、クラシック音楽において、民謡や俗謡のもつパワーを信じ、それを昇華させて偉大な芸術を生み出している作曲家は枚挙に暇が無い。

 あまりにいるのでいちいち云わないですが。

 したがって、日本人の作家にかぎり、日本民謡を使っているため聴きたくないというのは非常にナンセンスな話であって、1回聴いてからやっぱりダメならしょうがないけど、とりあえず聴いてから判断してほしいな。日本人で西洋音楽なんかやっていると、自分の国の音楽は気恥ずかしくって卑下してしまう傾向があるようだ。
 
 まあラプソディーは、わざわざウケのため民謡メドレーであるからして、あれを聴いて気恥ずかしく思うのは、吹奏楽の演歌メドレーを聴いて恥ずかしくなるのと同じなのだろうか。

 帰国交響曲に関しては、25分ほどで、アンダンテ、スケルツォ(ヴィーヴォ)、トランクィーロ、アレグロという古典的なもの。1楽章の民謡を基礎にした旋律は「そのもの」ではなく、いろいろとアレンジされている。しかし、息の長さは変わっておらず、まるでドヴォルザークを思わせる作りで、たいへんに聴きやすい。かつ、ここにみられる(12音ではない。)現代的な書法というのは、耳に新しい息吹を与えてくれよう。2楽章で「会津磐梯山」 3楽章で「南部牛追い歌」が使われている。

 CDの解説にもあるが、ここでいう帰国とは、西洋音楽を学ぶ身にあって、日本の旋律に帰って来た、という意味なのかもしれない。


第2交響曲(1999)

 2番交響曲は帰国から数えて34年後に、純粋なる管弦楽表現として生まれた。それ以外の交響曲は、合唱入りのカンタータ形式だったりしているようで、番号はない。この第2番こそ、外山が初めて番号を記した作品であるが、いきなり1番を抜かして2番。理由が、帰国が事実上の1番だから、であるらしい。

 こちらは3楽章構成で20数分というものだが、とうぜん楽章単位の規模は帰国よりも大きい。緩急緩の構成で、ペサンテ、モデラート・エネルジーコ、レントと表示がある。

 帰国と同じCDに入っているので聴き比べることができるが、まず響きが分厚くなっていること、旋律の取り扱い方がより入念になっていること、音楽の広さがぐんと大きくなっていること、などが特徴してあげられる。それは作曲家としての、外山の進化の証である。
 
 外山の音楽は日本にかぎらず人間としての旋律の大切さを認識し、そのパワーを信じている。不協和音はけして旋律を邪魔しない。
 
 冒頭よりブーンと低音が持続し、独特の雰囲気。その上をさまざまな楽器が民謡風の旋律を断片的に奏でて、持続低音が終わるや、その全貌が明らかにされる。音楽はささやくように進行して、はじめの持続低音が戻ってき、1楽章を終える。

 2楽章も不思議な雰囲気で、高音と中低音の持続音が連続して登場し、互いに牽制し合うといったら良いのか、野生動物が威嚇しあっているような迫力がある。それとも怪獣か。案の定、咆哮が接近してついに鉢合わせると、怪獣映画のBGMのような展開となってなんとも面白い。いや、シリアスな音楽ですけど。
 
 3楽章にあっても、持続音が続く。ここにきて、この持続音が今交響曲の核心なのだと分かる。この重たいレント楽章は、まるで災害の現場を見つめているようだ。(怪獣災害か?)

 もしくは、純粋なる祈りの風景か。
 
 第2交響曲は全体的にとても重厚かつシリアスな音楽で、けっこうお腹が一杯になります。


オマケ

 交響曲の全リスト
 1953年 NHK管弦楽懸賞佳作 「小交響曲」
 1965年 交響曲「帰国」(第1番)
 1969年 交響曲「炎の歌」
 1977年 交響曲「風雪」
 1984年 交響曲「名古屋」
 1987年 交響曲「五月の歌」(林光との共作)
 1995年 交響曲「但馬」
 1999年 交響曲第2番
 2001年 交響曲第3番
 2002年 交響曲「あきた」
 2003年 交響曲第4番〜Tief in den Urwald,weit aufs Weltmeer〜
 
 (外山雄三氏のホームページより)

 名古屋出身で交響曲「名古屋」の初演も聴いたというチェロ弾きの友人が、「交響曲名古屋、CDにならねえかなあ」と云っていた。

 同感。誰かしてください。全曲してくれ。


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