アレーンスキィ(1861−1906)


 本サイト掲示板でGOLDさんに紹介頂いた。グラズノーフカリーンニコフと同年代の作曲家で、裕福な家に生まれ育ったので幼少より不自由なく音楽教育を受けた。ペテルブルク音楽院ではかのリームスキィ=コールサコフに師事。卒業後はモスクワ音楽院で講師〜教授を務め、ラフマーニノフ、グレチャニーノフ、スクリャービンを教えている。
 
 作風は穏健で、フランス音楽の影響もうけて小洒落ている。しかし、師リームスキィ=コールサコフやチャイコーフスキィの影響を隠さず、際立った個性の確立には至らなかった。そのため師には「早晩忘れ去られる」などと酷評を受けたという。

 20代で精神病を患い、モスクワ音楽院を退職後はサンクトペテルブルク宮廷礼拝堂の学長となってピアノ奏者や指揮者をした。それを辞した後は多額の年金生活となり、仕事に就かなかった。羨ましい話だが、博打やアルコールに嵌り、44歳で結核により亡くなった。

 いまとなっては、確かにメジャーではないが完全に忘れ去られているというでもなく、その没個性が個性ともいえる。かなりの数の作品を残しているが、日本ではピアノ三重奏曲が高名な程度だろう。交響曲が2曲ある。


第1番交響曲(1883)

 若いときに書いた、古典的な作風もつ作品。4楽章制で30分ほど。じっさい、師匠のリームスキィ=コールサコフの言ではないが、特にこれといった個性的な特徴を有しているものではない。が、凡作というでも無い、なんともマニアックで通好みな作風。中庸というでもなく、しっかりした造りをしている。旋律も良い。一部に熱心な愛好家がいてもおかしくない。

 1楽章はアダージョ〜アレグロ・パテーティコ。感傷的なアレグロというほどの意味である。金管の咆哮を従えた重苦しいアダージョから始まる。感傷的な主題がいかにもロシアらしい。すぐにその派生のアレグロとなり、第1主題が進む。第2主題は明るい晴れ間が広がる。リピートは冒頭のアダージョから繰り返している? だとすればちょっと珍しい。展開部はドラマティックに推移して、ぜんぜん悪くない。ここらへんの交響曲なら普通に後世へ残るだろうし、現に残っている。ただ、世界中のオケの定演に乗るという意味でのメジャーにはならないかな、というほどで。第1主題の展開の一部として、忽然と現れる一瞬の重々しい行進曲も面白い。第2主題の展開も行われ、再現部から小展開をしつつコーダとなって豪快に楽章は閉じる。

 2楽章、アンダンテ・パストラーレ・コンモートとある。これは、動きをつけた、田園的なアンダンテというほどの意味となる。冒頭のホルンから上等な田園的雰囲気。セオリー通り作られてゆく。木管と弦楽を主体とし、牧歌的な音調がうまい。技術は確かな人だと分かる。あと、前衛になるか古典的な作風を愛するかはその人の個性だろう。中間部では低弦が加わって重厚な響きとなる。ホルンのシグナルも憂いを帯びる。冒頭に戻り、主題が再現されるが伴奏に変化も。

 3楽章はスケルツォ、アレグロ・コンスピーリト。活き活きとしたアレグロ。ここにきてロシア色満開! ずんどこと進む重スケルツォ。重苦しく、暗く、切ない響き。トリオ主題も、愛くるしくどこか哀しい。トライアングルも鳴き声のようだ。冒頭へ戻ってからトリオ、そしてコーダへ。

 そして終楽章、4楽章はアレグロ・ジオコーソ。陽気なアレグロというほどの意味となる。タンバリンやシンバルも出てきて、いかにもロシアンシンフォニーとなる。だが、そんなに仰々しくなく、エスプリを忘れない。それこそがアレーンスキィの個性だろう。ロシア的な主題とピョコピョコした主題がからみ、牧歌的な旋律を引き出して、それを展開してゆく。展開部後半ではテンポを倍に引き延ばした主題が朗々と響きわたり、一気にコーダへ向かうと思いきや、再現部となって第1、第2主題が現れる。もう一度おおらかに響く第1主題が出て、意外とアッサリとした終結部を迎えて終わる。

 若書きであり、インパクトに欠ける佳作っちゃ佳作だろうが、溌剌としつつ全体に漂う上品な香気が素晴らしい。


第2交響曲(1889)

 こちらも、年齢的には28歳で若いころの作品。4楽章制で20分ほどと、こぶりな交響曲に仕上がっている。

 アレグロ・ジョーコ(戯れのアレグロ)の第1楽章冒頭からロシア色は少なく、まるでドイツの古典作品。活き活きとした第1主題に続いて明るくウキウキとした優雅な第2主題が順当に登場。繰り返して、展開部。第1主題を分かりやすく扱い、ここでようやく少しロシアっぽく低音が鳴る。第2主題の展開も憂愁感が漂う。そのまま、聴いた限りでは再現部無しでアタッカで第2楽章へ進む。

 2楽章はロマンス、アダージョ・マノントロッポ。マノントロッポは良く出てくる発想記号だが、「しかしやりすぎずに」という程度の意味である。ホルンの朗々とした響きから始まり、どことなく仄かに暗い。茫洋とし、荒涼とした寒空の大平原を思わせる世界観が、ロシアらしいか。旋律はヴァイオリンが引き継いで、木管とチェロが奏でるころ、ようやく陽がさす。そのまま幸福感を楽しんで終わる。

 3楽章はスケルツォではなく、インテルメッツォ(間奏曲)のアレグレット。やはり、小交響曲的な雰囲気を出している。愛らしい旋律がついついと踊る。三部形式。中間部では二重唱。冒頭へ戻って優雅な踊りが再開する。

 4楽章、フィナーレ、アレグロ・ジョーコ・エポイ・フーガ。e poi fuga は「その後にフーガ」という意味なので、後半にフーガがある。だが、楽章自体が短い。ティンパニの一撃から堂々とスタートする。溌剌とした主題が突き進み、その展開が行われるが、ジャン! といったん終結し、その主題の派生によるフーガが始まる。木管や弦楽による小フーガの後、コーダになって堂々の終結を迎える。





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